アカウミガメふ化せず 磯の浦で産卵も未受精

卵を調査する日本ウミガメ協議会(県サーフィン連盟提供)
卵を調査する日本ウミガメ協議会(県サーフィン連盟提供)

和歌山市の磯の浦海水浴場で7月下旬にアカウミガメが上陸し産卵した痕跡が見つかって以降、地域住民らはふ化を見守り続けてきた。しかし3カ月経過してもふ化は確認されず、20日、全国各地で調査や保護活動を行うNPO法人日本ウミガメ協議会が調査したところ、卵は98個あり、いずれも未受精卵だったことが分かった。

同海水浴場では7月23日午前6時ごろ、サーフィン客の女性が、砂浜から海に向かう1匹のカメを発見。足跡をたどってみると、穴を掘って卵を埋めた形跡があり、産卵したとみて、海水浴場の管理者は網を設置し、卵をトンビなどの天敵や海水浴客から保護した。

ふ化には砂の温度が重要であることから、地元の西脇中学校1年の伊藤茜さん(13)が毎日、朝と夕方の2回、温度を測ってきた。

同協議会の松宮賢佑事務局長によると、全国的に高温でふ化しないケースが増えているが、データを見ると温度は適性で、卵を割ってみると胚がなく、受精していないことが確認された。ウミガメの交尾、精子、受精のメカニズムについては、いまだ不明な点が多く、交尾が不十分だったことや、母ガメの体調の影響などが考えられるという。

伊藤さんは5歳の頃、同海水浴場でアカウミガメがふ化し海に帰っていくのを見て、8年ぶりにその光景に出会えるのを楽しみに毎日の温度調査を続けてきたといい「表面温度は50度を超えていたけど、50㌢ほどの深さでは30度ぐらいを保っていた。安心していただけにショック。また産みに来てくれるのを待ちたい」と話した。

同海水浴場を管理運営するメンバーで、県サーフィン連盟の梅本利樹会長は「磯の浦はウミガメが選んだ自然環境が整っている美しいビーチ。ここを愛する皆さんのビーチクリーン活動のたまものだと思っています。この素晴らしい海水浴場を誇りに思ってほしい」と話した。

ウミガメは2~4年おきに産卵する。地元の人たちは再び来ることを気長に待ち続けるという。