紀伊半島60年かけ調査 大地の成り立ち一冊に

新訂された紀伊半島の成り立ちが分かる本
新訂された紀伊半島の成り立ちが分かる本

和歌山県紀美野町の中屋志津男さん(74)らが紀伊半島の地形や地質を調査、研究してまとめた紀伊半島の成り立ちが分かる『紀の国 石ころ散歩新訂版―まるごとわかる大地のなり立ち―』が、宇治書店から出版された。県民の生活や産業、防災に生かしてもらいたいと出版され、1話完結で、野外の観察もできるよう地形や地質現象を分かりやすく掲載している。

同書は、1960年代以降に故原田哲朗博士を中心に、和歌山大学と京都大学の教員や学生、卒業生が、紀伊半島の地形や地質、地下資源を調査したことを研究論文として公表したことを分かりやすく解説した99年発行本の改訂版。59話から新たな情報を加え75話に、モノクロからカラーにするなどしてまとめた。

新生代第四紀(約260万年前)から古生代シルル紀(約4億4000万年前)へと地質時代をさかのぼり、地質や人々の生活と大地の関わり、地震や津波、気象、山地災害などを取り上げている。

著者は中屋さんの他、元高校教諭などで地質研究をする児玉敏孝さん、吉松敏隆さん。

中屋さんは和歌山大学大学院修士課程修了。現在は、㈱白浜試錐の顧問を務める。学生の頃から和泉山脈から南の地質調査の研究を続け、両大学に事務局がある三つの研究グループと共同で現在も調査をしている。

研究チームは、できるだけたくさんの石を観察するために滝を登り、川の中を歩いて調べた。那智の滝のなり立ちや赤土や黒土と火山灰との関係など、60年間で延べ10万人が調査した。

中屋さんは「自分が住んでいる場所の地形の特徴や地質も知ることができる。農業や土木などの産業、防災に生かしてもらえたら」と話している。

今後は、地質構造やどんな歴史的な背景で紀伊半島が形成されたのかを総括することで、研究論文としての発表を目指しているという。

2750円。宇治書店(和歌山市)やアラオ岩出店、紀の川市店、福岡書店(海南市)などで購入できる。