多田、林さんに文科相表彰 地域文化功労で

多田さん(県提供)
多田さん(県提供)

芸術・文化の振興や文化財の保護などに尽力した個人、団体に贈られる2024年度地域文化功労者表彰(文部科学大臣表彰)に和歌山県内から、和歌山市民オペラ協会会長の多田佳世子さん(和歌山市)、元県銃砲刀剣類登録審査委員の林尚夫さん(同)の2人が選ばれた。表彰式は京都市内で行われた。

郷土にオペラ文化 多くの後進を育成

多田さんは1939年に和歌山市に生まれた。武蔵野音楽大学短期大学部声楽科を卒業し、27年間にわたり県内の高校で音楽教員として指導に当たった。

大学卒業後の62年から音楽活動を本格的に始め、リサイタルなどを数多く開催し、和歌山市交響楽団の定期公演などに出演。64年に和歌山市民オペラ協会の前身である和歌山声楽研究会を設立し、代表として数々の公演への出演、国内外の著名なアーティストの招聘(しょうへい)などを通じ、本格的なオペラ文化を和歌山に根付かせるための活動を60年以上の長きにわたって続けてきた。

市民オペラ協会の公演実績は60回以上で、96、98年には県外の国民文化祭に参加し、2021年に県内開催された「紀の国わかやま文化祭」では、自身のプロデュースにより、南海地震の津波から村人を救った濱口梧陵を題材とする新作オペラ「稲むらの火の物語―梧陵と海舟」を上演。この作品は22年には「第20回佐川吉男音楽賞」を県内の団体として初めて受賞し、地域を越えた普遍性を持つ作品として高く評価された。

この他、多岐にわたる作品の企画、演出、出演に携わり、多くの若手声楽家の育成にも尽力。県内の複数の音楽コンクールで20年以上にわたり審査員を務め、子どもを対象としたオペラの舞台体験ワークショップ、唱歌を歌いながら学ぶ「唱歌の学校」の開催、音楽療法を活用したボランティア活動など、音楽を通じた地域社会への貢献は極めて大きいとして、今回の表彰に選ばれた。

高い刀剣鑑定技術 普及啓発に貢献大

林さんは1942年生まれ。明治大学農学部農業経済学科を卒業後、和歌山県農業信用基金協会に勤める傍ら、公益財団法人日本美術刀剣保存協会和歌山支部理事・副支部長・支部長を歴任し、日本刀製作と関連技術の保存や普及啓発に大きく貢献してきた。

刀剣鑑定を日本刀鑑定の第一人者である本阿弥光博氏に、刀装具について鑑定家の福士繁雄氏、笹野大行氏に師事。83年からことし3月まで41年にわたり、県銃砲刀剣類登録審査委員として刀剣登録の適正で円滑な審査に尽力した。

「刀剣美術」誌への研究の発表など、日本刀の研究、鑑定技術の研さんに努め、その識見や技術の高さは、県内の刀匠、刀装具師などから高い評価と信頼が寄せられている。