医者目指す「桜子」の苦悩 得津さんが続編小説
和歌山市のマナーコンサルタント、得津美惠子さんが小説『続・桜子』を夢叶舎から出版した。2021年の前作『桜子』で医学部合格を果たした主人公の桜子が、大学生活で待ち受けるさまざまな人間関係に苦悩しながら、懸命に自分の道にまい進する姿を描いている。
前作は、母子家庭の桜子が母親、親友の死を乗り越えて医学部合格を果たすまでをつづった。続編は、医者を目指し大学生活の中でさまざまな人たちと出会い、多くの苦難を経験。さらに親友の死に関わる人物にも遭遇する。憎しみだけではない感情が生まれ、一人の女性として成長していく姿を描いた。
医学生のリアリティを求め、貴志川リハビリテーション病院長で脳神経外科が専門の亀井一郎医師に監修を依頼した。得津さんは、昼間はコンサルタントの仕事をこなしながら夜間に執筆。限られた時間で難しい医学用語や資料を読み解き、2年かけて書き上げた。「書き上げた時は、充実感よりもほっとした気持ちでいっぱいだった」と話す。
舞台の中心は和歌山市。せりふは和歌山弁で、実在する店、観光地、特急列車「くろしお」など県にゆかりのある施設が多く登場する。桜子が白浜町を旅し、余暇を過ごしたホテルも実在。そのロビーに置かれた前作を宿泊客が読み、「『続編を貸してほしい』という要望が数多くあった」との報告を受け、得津さんは続編執筆の決意を固めた。
12年間、亡き母の通院に付き添ってきた得津さんは、「病院の良いところも悪いところも、いろいろな場面を見てきた。将来医者を目指す人に、人間の尊厳を大切にするような医療人になってもらいたい」との願いも込めた。「リアリティを求めて、できる限り細かく書いたので、賛否両論あるでしょうがそこは読み手に任せます。桜子は愚直で利他の心あふれる女の子。苦難に何度心が折れても、『一生懸命生きていたらきっといいことがある』と伝えたい」と話している。
75㌻、1650円。市内書店などで購入できる。インターネットで電子書籍も購入可能。