和歌山市の石井さんが入賞 紙芝居コンクール

作品を手に笑顔の石井さん
作品を手に笑顔の石井さん

紙芝居文化推進協議会(神奈川県横浜市)が主催する第24回手づくり紙芝居コンクールで、和歌山市の石井亨さん(82)の作品「おっちゃんの宝もの」が大賞に準ずる横浜市長賞に輝いた。自身が幼い頃に出会った街頭紙芝居のおっちゃんとの交流を描いた心温まる作品で、石井さんは「この歳になってこれまでになかった人生最大の喜びを味わった」と驚いている。

同コンクールは手づくり紙芝居の普及を目的に2000年から毎年開催。全国の幼児・小学生(ジュニア)や一般を対象に作品を募集。今回はジュニアの部111点、一般の部140点の応募があり、各部の優秀作品を選出。1日に神奈川県青少年センターで、子どもたちを前に実演による公開審査会が行われ、一般の部では7人が出場し、紙芝居作家ら9人が審査。各部から大賞と横浜市長賞が選ばれた。

石井さんは高野口町出身。県立医科大学を卒業後、1985年に同市栄谷で内科院を開業。22年12月まで医師として働いた。引退後は「子どもの頃に憧れていた紙芝居をする人になりたい」と得意の絵と文章を生かし創作活動をスタート。和歌山紙芝居研究会に所属し、幼稚園や自治会で自作の紙芝居を披露してきた。ことし9月から月1回、東京の紙芝居セミナーに通い、作り方や演じ方を学んでいる。

今回の作品は、石井さんが紙芝居作りをするきっかけとなった子どもの頃の実話を描いた物語。3人きょうだいの末っ子でお下がりばかりだった少年が、初めて新品のハーモニカを母からプレゼントされ、紙芝居のおっちゃんに自慢する。「あんたの宝物やなぁ」と言われ「おっちゃんの宝物は何?」と聞くと「やっぱりこの紙芝居や」と答える。やがておっちゃんは急に亡くなり、少年がその宝物を引き継ぐという内容。

石井さんはハーモニカの演奏を交えながら、感情を込めて演じ切った。

審査をした紙芝居作家の宮﨑二美枝さんは「紙芝居は人が演じるからこそ、人となりも合わせて観客に伝えてくれるものだと改めて思わせてくれる。紙芝居人のバイブルにしたい作品」と高く評価。

石井さんは「昨年応募したが落選だった。『来年は入賞したい』と1年間頑張ったのが実った」と笑顔。「絵が動いて見えるような語りをしたい」と、出場が決まってから、登場人物によって声を変えるなど、2カ月間毎日練習を重ねたという。

石井さんがこれまで制作した紙芝居は、和歌山にちなんだ物語を中心に15作品。「日々の暮らしの中に物語のヒントはたくさんあり、一日中紙芝居のことを考えている」と笑う。

「立体的に伝えられる紙芝居の可能性は大きい。今後は若者向けに、命の大切さや性教育をテーマにした紙芝居も作ってみたい」と意欲たっぷりで創作活動に取り組んでいる。

受賞した作品は22日午後3時から、和歌山市民図書館で開かれる和歌山紙芝居研究会による「絵本・紙芝居を楽しむ会」で披露する。

入場無料。当日午前9時から4階カウンターで整理券を配布。

問い合わせは同館(℡073・432・0010)。