インバウンドの動向報告 近大生が城周辺で調査

調査結果を発表する学生
調査結果を発表する学生

和歌山城周辺を訪れた外国人旅行者に対し、近畿大学の学生が来訪の目的や移動手段、消費行動などの聞き取りを行った調査結果の報告会が21日、和歌山市のわかやま歴史館で開かれた。20~30代の若者が中心で、8割以上がSNSやウェブサイトなどのデジタル媒体で情報を得ていること、和歌山の満足度は高いことなどが分かり、今後の観光振興に生かそうと、学生と市職員が意見交換した。

調査をしたのは、新井圭太・同大経済学部准教授のゼミで学ぶ3年生21人。昨年11月下旬に201グループ、504人の外国人旅行者から聞き取った。

調査項目は、どの国・地域から誰と、いつ来たかなどの属性、旅行の目的や交通手段、旅行の予算や何にいくら使ったかなどの消費行動、和歌山の情報を知ったツール、満足度など多岐にわたり、集計と分析を行った。

外国人旅行者の居住地域は、東アジアが62%を占め、中国、台湾、香港の順で多かった。全国の統計では韓国からの来訪が最も多いが、今回の調査では10人にとどまり、市職員からは、市の統計や観光関係者の実感とも一致する結果との意見があった。

年齢層は30代が最多の121人、次いで20代が117人。訪日回数は6回以上が32%、初めてが23%で二極化が見られ、和歌山への訪問は79%が初めてと回答した。旅行の目的は「景観」がトップの43%で、50%が市内に宿泊し、宿泊形態はホテルが62%だった。

交通を見ると、入国と帰国はほぼ関西国際空港からで、市までの移動は64%が鉄道を利用。観光バスは12%にとどまり、発表した学生からは「バスによる団体輸送は、すでに古い手法になっているかもしれない」との指摘があった。県内で移動すると答えた人は80%で、移動先は白浜、熊野、高野山が多かった。

和歌山の情報源は公式サイト、SNS、YouTubeの三つで80%を占めた。地域別では、東アジアはSNSとYouTubeの利用が多く、北米と欧州は公式サイトの利用が多い特徴が見られた。

和歌山の満足度は、5段階評価で最も高い「5」が61%、「4」を含めると96%に達し、非常に高かった。各調査項目が満足度に与えた分析によると、有意にマイナスに寄与した項目は中国、東南アジアで多く、台湾、香港、欧州では有意にプラスに寄与した項目が多く、全体に満足度は高い中で、地域差も見られることが分かった。

調査を踏まえ学生たちは、東アジア向けのSNS、YouTubeの発信の充実、初めての来訪者の満足度を引き上げる取り組みの必要性などを提言した。

意見交換した市職員からは「どの国から、どんな人が、どういう情報を得て、どんな手段で和歌山に来ているのか、雰囲気で感じていたことが、データで実感になった」などの声があり、満足度向上や課題への対策など今後の取り組みの参考になる調査結果を歓迎した。

調査に参加した宮國優菜さん(21)は「SNSを見て来る人が多いことなど、データが出て『やっぱり』と確認できたことが多かったが、もっと知りたいこともたくさん出てきた。調査の中で現地の言葉を教わったり、貴重で楽しい経験ができた」と笑顔で話していた。