「帝国座テラス」誕生へ 食のテナント募集も

「帝国座テラス」のイメージスケッチ(南北提供)
「帝国座テラス」のイメージスケッチ(南北提供)

文化や娯楽の拠点として和歌山市民に長く親しまれた映画館「帝国座」の跡地(同市新雑賀町)に今秋11月、新たな商業施設「帝国座テラス」が誕生する。内川に面して開けた水辺の空間を生かし、「食」をメインに個性的なテナントを募る施設となり、人やまち、文化などをつなぐ結節点、にぎわい創出の新たな拠点を目指す。開発はビルメンテナンス、不動産事業の㈱南北(同市関戸、樫畑友洋社長)が手がける。

新施設のパースを前に談笑する樫畑社長㊧と有井さん
新施設のパースを前に談笑する樫畑社長㊧と有井さん

旧帝国座は1928年に開館し、戦災による焼失と復興、建て替えを経て2003年に映画館としての歴史を閉じた。閉館時の建物は71年1月の建築で、映画館の後はライブハウス、ビールバー、クライミングジムなどとして活用され、2023年に解体されている。

南北は水辺に住む価値を重視する不動産開発を約30年にわたり続けており、「水辺はロケーションが良く、城下町で水路が多い和歌山の川沿いをうまく活用できれば、地域の起爆剤になるのでは」と樫畑社長は考え、新施設の開発を決めた。「憩える水辺で『食』を楽しめる施設にしたい。文化や娯楽の発信拠点だったこの場所をよみがえらせたい」と、市民になじみ深い「帝国座」の名前を残すことにした。

「帝国座テラス」のコンセプトデザインを担当する㈱PLUS SOCIALの有井安仁取締役によると、新施設のキーワードの一つは、さまざまなものが交差する「クロスポイント」。和歌山城の外堀として造られた内川を構成する市堀川、大門川、和歌川の合流地点に近く、歴史的には水運の物流で栄えた。中ぶらくり丁と東ぶらくり丁をつなぐ雑賀橋のたもとに位置し、商店街と歓楽街の結節点、日常と非日常、仕事と娯楽の交差点であり、「これまでも大事な場所だったし、これからも大切な場所になり得るユニークで個性的な場所」と有井さんは話す。

もう一つのキーワードは「ガストロノミー」。食文化や食に関する研究、料理の芸術の考察などを意味し、「美食学」などと訳される。和歌山の気候や風土、歴史から生まれた食材や伝統などを楽しめる施設を目指し、近くテナントの募集を開始する。

施設の敷地面積は613・92平方㍍、木造平屋建てとなる予定。テナントスペースは8カ所あり、川沿いの西側5カ所は専門飲食店に限定し、東側3カ所は飲食店をメインに、美容系サービスなども対象とする。東西のスペースの間にはあえて奥まで見通せない路地を設け、入りたくなる空間を演出。西側の河川敷との間には共用のテラスも設置する。

河川とまちの空間が融合した良好な水辺空間の活用を目指し、和歌山市が推進している「かわまちづくり」とも連携した事業となる。

新施設が面する河川敷では、水の近くまで下りて憩える親水空間を、県が2~4月ごろの予定で整備する。その後、新施設の建設工事を行い、11月の開業を予定している。

「他と違う個性的な店をやってみたい人には良い施設になる。地元が好きで、コミュニティーを大切にする人が集まる場になれば」と有井さん。樫畑社長は「集まった店が〝らしさ〟を出し、人が集まるようになれば、すごく面白い。他府県の人に『和歌山に行くならここへ』と言えるような場所になってほしい」と話している。