県25年度予算案6138億円 財政見通しが悪化

和歌山県は13日、2025年度当初予算案を発表した。一般会計は総額6138億1290万円(前年度比2・3%減)で過去3番目に大きい規模。物価や金利、賃金の上振れなどにより財政収支の見通しが悪化する中、学校給食費の無償化や熊野白浜リゾート空港の利用促進、能登半島地震の教訓を踏まえた防災減災対策など、重点施策に必要な予算を確保したとしている。20日開会の2月定例県議会に提案する。

重点施策は、①こどもまんなか社会の推進②成長産業の創出③農林水産業、観光産業をはじめとする地域産業の強化④人口減少下におけるまちづくり⑤安全安心で心豊かに暮らせる社会づくり――の5項目を柱とした。

前年度は、政策的経費を一律で15%削減する大規模なマイナスシーリングなどにより、予算を捻出。25年度は、重点施策や新たな財政需要には既存事業のスクラップアンドビルドで対応した。

岸本周平知事は「物価や金利の上昇などにより財政悪化のスピードが速まっており、大変危機感を持っている。一方で、県民に夢と希望を与えなければいけない大事な予算も確保しながら、なんとかやりくりしている。来年以降、緊張感をもってより一層の税源の捻出をしていかなければならない」と述べた。

歳入

県税収入などの自主財源は2742億円で全体の44・7%を占め、依存財源は3396億円。

自主財源のうち、県税収入は前年度比4・4%増の984億円。個人県民税は定額減税の終了により31億円(10・4%)増の334億円。法人二税は、企業の業績回復により11億円(4・9%)増の225億円を見込む。地方消費税は1・8%減の201億円、自動車税は0・5%増の120億円などとなっている。

依存財源は、県税収入の増加などに伴い、地方交付税が0・7%減の1830億円となり、地方交付税で措置される臨時財政対策債の発行はないと見込む。国庫支出金は、地域保健医療推進事業費の増加、23年度台風等災害復旧事業費の減少などにより、全体で2・9%増の816億円。

県債発行額は5・3%減の536億円で、県債依存度は0・3減の8・7%。25年度末の県債残高は、2・1%減の1兆598億円となる見込み。臨時財政対策債を除くと7945億円で、県民1人当たり87万円の借金となる。

収支不足の74億円は県債管理基金の取り崩しで対応し、同基金と財政調整基金の25年度末残高は合計133億円を見込んでいる。

歳出

義務的経費は3・1%増の2431億円で、歳出全体の39・6%を占める。うち人件費は、人事委員会勧告に伴う給与改定による増加や定年引き上げによる退職者減に伴う退職手当の減少などにより0・8%増の1394億円。県債の返済に充てる公債費は、元金の増加、金利上昇に伴う利子の増加により7・0%増の821億円となっている。

政策的経費のうち建設事業費などの投資的経費は6・2%減の1026億円。内訳をみると、普通建設補助事業は、特定緊急砂防などの増加で2・6%増の565億円。普通建設単独事業は、消防救急デジタル無線運営の増加や、前年度の増加要因の環境衛生研究センター再整備の減少により0・9%増の254億円。直轄負担金は、すさみ串本道路整備費の減少などで31・2%減の102億円。災害復旧費は26・3%減の105億円を計上している。

補助費等は、コスモパーク加太対策で前年度に計上した、土地開発公社借入金の代位弁済の費用231億円が皆減となった一方、地域保健医療の推進、公立学校の情報機器整備、学校給食費無償化などによる増加があり、全体で9・9%減の1480億円となっている。その他の歳出は1・2%増の1200億円。

収支見通し

県は23年度の当初予算案発表時、「財政危機警報」を発令し、財政運営の見直しを進めてきた。

25年度当初予算案の収支不足74億円は過去3番目に大きい赤字で、対応のため取り崩す県債管理基金と財政調整基金の残高は、新中期行財政経営プランで目標とする150億円を下回る見込み。

今後も公債費、人件費、社会保障関係経費は大幅な増加が避けられず、財政危機警報時点では28年度と想定していた両基金の枯渇は、27年度に1年早まる見通しとなった。

県は、既存事業の効果検証などによる見直しや重点化、新たな歳入確保策の検討、予算執行の効率化などにより、必要な財源捻出に取り組むとしている。

財政収支見通しの悪化について説明する岸本知事
財政収支見通しの悪化について説明する岸本知事