智弁和歌山準V 見えた成長、「夏へ」前向く

準優勝旗を手に智弁和歌山の選手たち
準優勝旗を手に智弁和歌山の選手たち

第97回選抜高校野球大会は3月30日、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で決勝が行われ、智弁和歌山は横浜(神奈川)に4―11で敗れた。31年ぶり2回目の優勝はならず、「日本一」という目標は夏に持ち越しとなった。

【決勝】

智弁和歌山
横浜 ×11

〔智〕渡邉、中井、宮口、若井、田中-山田〔横〕織田、片山、奥村、山脇-駒橋▽三塁打=福元(智)▽二塁打=阿部、江坂(横)

試合前、両監督が勝敗の鍵として挙げたのは「先制点」だった。智弁のエース・渡邉颯人は、準決勝までの計26イニングでわずか2失点(自責1)、防御率0・35と圧倒的な安定感を誇っていた。しかし、初回2死二塁、横浜の4番・奥村頼人にライトへのタイムリーヒットを浴び、先制点を献上。「自分の力の足りなさだった」と肩を落とした。

智弁は2回、「ここで打ってほしいときに打つのが4番」と意気込んだ福元聖矢の二塁打を皮切りに荒井優聖の安打、大谷魁亜の適時打で同点に追いつく。福元は「あそこですぐに追いつけたのは自信につながった」と振り返る。2回には「負けたくない気持ちの強さがプレーに表れた」という藤田一波のダイビングキャッチのスーパープレーも飛び出したが、3回に横浜打線に2点を追加され、1―3とリードを許した。それでも中谷仁監督は「この回までは想定内だった」と冷静に見ていた。

試合を大きく分けたのは6回だった。この回、ダブルプレーでチャンスをつぶしかけた横浜だったが、智弁の失策も絡み、一挙6点を奪われる。渡邉はここで降板し、「勝つこと、選手のことを一番に考えてくれる中谷監督を日本一にできなかったことがただただ悔しい」と語った。続くマウンドには中井貴が立ち、7回には宮口龍斗、若井翔路と継投したが、計2点を失い1―11と苦しい展開に。

智弁も意地を見せた。8回、藤田の安打をきっかけに1死二、三塁のチャンスをつくると、福元が2点適時打。9回にも山下晃平の適時打で1点を返したが反撃はここまで。横浜の堅い守備に阻まれ、追いつくことはできなかった。

福元は大会前、「昨夏の甲子園で3年生の夏を終わらせてしまった」と悔しさをにじませた。「銀色では3年生への恩返しにはならない。自分たちの集大成として、銀色を金色に」と夏へと強く決意した。

昨秋の近畿大会で肩を痛め、今大会では出場機会が限られていたキャプテン・山田希翔は試合中、ベンチで立ったまま人一倍声をかけ続けた。「たくさんの人たちのおかげでここまで来られたことに感謝している。縁があって集まったこのメンバー。夏は必ず戻ってきて日本一を取ります」と力強く誓った。中谷監督は「横浜は勝負どころで結果を出す中心選手が見事だった」と相手をたたえ、悔しさを見せたものの甲子園の大舞台で5試合を経験し「選手たちがすごく成長しているのが見えた」と大会を振り返った。


尾花正啓和歌山市長 第90回大会に次いでの準優勝は、日頃の厳しい練習とたゆまぬ努力のたまものであり、私たち和歌山市民にとっても大変誇らしいことであります。健闘された選手の皆さまや監督をはじめ、チームを支えてこられた多くの関係者の皆さまに、心から感謝とお祝いを申し上げます。