心こもった郵便1400通 紀三井寺で文供養会

桜が満開の境内で焼香する参列者
桜が満開の境内で焼香する参列者

宛て名や差出人が分からない郵便物や簡単に処分できない大切な郵便物を供養する「文供養会(ふみくようえ)」が5日、和歌山市の紀三井寺で行われ、約120人が参列し、桜が満開の境内で約1400通を供養した。

郵便事業関係者らでつくる文塚供養奉賛会(島本敏夫会長)が主催し、毎年実施。1967年に「迷い子郵便供養会」として始まり、94年からは大切な郵便物も併せて供養する「文供養会」と改め、今回で59回目を迎えた。

同寺の前田泰道貫主を導師に、境内に建立された封書をかたどった石碑「文塚」の前で僧侶たちが読経する中、郵便局の現職員、元職員、郵便ファンら参列者が郵便物を火にくべ、焼香し、静かに手を合わせた。

事前におたき上げをした1308通分と合わせ、郵便物の灰は白いつぼに入れられ、島本会長(75)が文塚に納めた。

日本郵便㈱主催の「手紙作文コンクール」に絵手紙を出品した県立和歌山北高校3年で美術部長の坪井幸輝さん(17)は「たくさんの手紙たちに感謝の気持ちをお伝えし、桜の樹の下で安らかに眠れることをお祈りします」と供養文を読み上げ、「文字を入力するだけのSNSと違い、手紙は、紙を使って自分の手で思いを込めて書く行動に意味があると感じる」と話した。

島本会長は「人の心が文字に表され、郵便となって人が届け、手元に残すことができる。この温かさは郵便に勝るものはない。郵便文化の大切さに思いをはせてもらいたい」と願っていた。