ハワイにおける宿泊税「TAT」

前号では、人形で地域の思いを伝播させる「ハワイアンモンクシール」の保護活動を取り上げた。ハワイでは宿泊税を用いた観光振興や環境保護の取り組みを積極的に導入している。今週は、ハワイの宿泊税とその仕組みについて紹介したい。
宿泊税は、特定の地域の宿泊者や宿泊施設の事業者に課される税金。日本では2002年に東京都で導入され、2016年から大阪府、2017年から京都市と広がりを見せている。いずれも一定額まで非課税で、宿泊料金が高額になるにつれ、税額が増す仕組み。宿泊税は条例で定められ、その用途は観光名所の国際化やオーバーツーリズム対策に用いられることが多い。
ハワイのケースを見てみたい。オアフ島では13·25%が課される。宿泊税の先進事例といわれ、観光地としての競争力を高めることを目的に1987年に導入された。「一時滞在のための宿泊施設税」を表す「TAT(Transient Accommodation. Tax)」として知られている。
税の利用用途としては、観光振興を専門とする「ハワイ州観光局(HTA)」が誘客のためのさまざまなプロモーションを展開し、世界から注目される観光地としての維持拡大に貢献。昨今は観光振興に傾注し過ぎることなく、州内の地域への分配や開発のための基金の設立、ホノルル市内を走る新交通システムの整備に充当。環境保護にも一定の割合で利用されている。
アメリカにおける消費税は4·712%であるため、宿泊税と合わせた課税のパーセンテージは約18%。旅行者の負担は少なくない。
和歌山県内でも宿泊税の導入が検討されている。旅行者に税を課されているという負の感情を抱かせるのではなく、持続可能な観光を推進する上で必要な負担として、その用途や効果を可視化し、積極的に発信する工夫が必要だ。(次田尚弘/ホノルル)