料理で人を幸せに ミャンマー出身キャンディさん

笑顔のキャンディさん
笑顔のキャンディさん

和歌山市中之島のイタリアンレストラン・セルブロックで、流ちょうな日本語で接客するのは、ミャンマー出身のキャンディ・チョジントウンさん(30)。独学で日本語を習得し、日本語能力試験N2に合格。来日してまだ1カ月、知り合いが誰一人いない和歌山で、料理や多くのことを学ぶため日々奮闘中。「ミャンマーで自分のレストランを開きたい」と夢を描く。

キャンディさんは、ミャンマー北部の都市ピン・ウー・ルウィン出身。大学ではミャンマー語を専攻。卒業後は酒を販売する会社や学校、ミャンマー料理店などで働いた。

2021年ごろ「新しい外国語を学びたい。外国に行ってさまざまなことを経験したい」と思うようになり「技術が高く、時間を大切にする」「仕事を頑張る」「安全な国」として日本への憧れを抱き、日本語の勉強を始めた。

当時のミャンマーは、内戦により外出が困難な状況で、働くこともできず自宅で過ごす日々だったと振り返る。まずは、ひらがなやカタカナをローマ字に置き換えて単語を覚えることから始めた。同じように日本語を学ぶ人たちとZoom(ズーム)を使い、オンラインで会話をし上達を目指した。

22年には日本語能力試験で基本的な日本語が理解できるレベルのN4を取得。タイへ渡り会社員として働き、料理に関するサービズや衛生面などを学ぶ資格も取得した。そして24年12月、中~上級者向けレベルであるN2に合格した。

日本で働くため専用サイトで仕事を検索したところ、同店の募集を見つけ「この店で働きたい」との思いが芽生えた。和歌山についても、どのような土地なのかを調べ「和歌山は生まれ育った故郷に似ている。自然があり食べ物がおいしい。人が多くなくゆっくりと過ごすことができる。住みやすくて私にぴったりの所」と感じたという。

憧れていた日本へ 人の温かさにふれる

ことし4月、ついに念願の日本へ。働いてみて初めて耳にするイタリア料理のメニューの多さや、内戦が無く夜に1人で歩いていても安全であることなど、新しい発見の毎日を過ごしている。「友達も知り合いもおらず1人で日本へ行くことに不安もありましたが、シェフやマダム、先輩らは優しくとても温かい」と笑顔で話す。

ホールや調理も担当し、サンドウィッチを作り、魚もさばく。キャンディさんのお薦めメニューはアクアパッツァ。来日して初めての食事で、人生でも初めて食べた料理で「シェフが作ってくれた。シェフの作る料理はどれもとてもおいしいのでぜひ食べてほしい」とにっこり。

「料理には人を幸せにする力がある。作る人も食べる人も幸せになるよう心を込めて料理を提供したい。ミャンマー料理も食べてもらいたい」と目を輝かせ、「やると決めたら最後までやる。自分のせいで人に迷惑をかけたくない性格です。多くのことを学びたい。日本語検定N1も目指したい」と意気込んでいる。