「アロハシャツ」と「かりゆしウェア」

現地の原材料が使用された「ボタン」
現地の原材料が使用された「ボタン」

前号に続き、和歌山の捺染技術と縁深い「アロハシャツ」の特徴と、地域を象徴するウェアとして普及した日本国内の新たな文化を紹介したい。

アロハシャツにはその絵柄によって冠婚葬祭の用途が異なることを前号で取り上げた。アロハシャツを名乗るには一定のルールがあるという。皆さんは何だと思われるだろうか。

ハワイの植物などの絵柄を使用することが条件かと思いきや、答えは「ボタン」の原材料。現地のヤシの木やヤシの実からできたボタンを使用することが、アロハシャツを名乗るための条件とされている。

プラスチック製などの場合は、絵柄が同じであっても「プリントTシャツ」や「アロハ風シャツ」と呼ばなければならない。生地は日本製であっても、シャツにおける唯一の装飾部分でアクセントとなるボタンは現地のものにするという地域愛とこだわりもまた、ハワイを象徴するウェアとしての魅力が増すストーリーである。

場所は日本に変わり、日本でもアロハシャツと似た文化が浸透しているウェアがある。沖縄県内で着用される「かりゆしウェア」である。「かりゆし」とは、沖縄の方言で「めでたい」を意味する。1970年に沖縄県観光連盟が「おきなわシャツ」として発売。夏を快適に過ごし、沖縄を訪れる観光客を温かく迎え入れようと始まった。

2000年の沖縄サミットを契機に、デザインの条件を緩和。名称を統一し、沖縄を代表するウェアとして浸透した。現在は県内産であることと、沖縄らしいデザインであることを条件とし、これを満たした製造業者に限り、販売時の証明となるタグの使用が認められている。

南国を思わせ、涼し気なウェア。いずれも地域への思いと愛が詰まっている。(次田尚弘・ホノルル)