車椅子での移送避難も 高松地区で自主防災訓練

和歌山市の高松地区防災会(石井太郎会長)が主催する自主防災訓練が23日に高松小学校で行われ、住民約260人が参加。車椅子利用者が避難する際の注意点、災害用仮設トイレの設置方法などを実践的に学び、防災意識を高めた。
同防災会は2000年に発足し、08年から地域の特性や実情に即した訓練を実施。継続的で、さまざまな機関と連携した活動が評価され、昨年には防災功労者内閣総理大臣表彰を受けている。
訓練は、早朝に串本沖を震源とするマグニチュード8・9の南海トラフ地震が発生し、地区内でも津波浸水の他、甚大な被害を受け負傷者が出たという想定で行われた。
午前9時に防災行政無線で訓練の開始を聞いた住民らは、家族の無事を知らせる黄色い布を玄関先にくくりつけてから自治会ごとに一次避難所に集合。その後、二次避難場所の高松小学校へ向かった。
同地区に住む尾花正啓市長も参加。開会のあいさつでは、7月にカムチャツカ半島沖で発生した大地震で県沿岸部に津波警報が発令された際、市内では車で避難した人が多く渋滞が発生したことにふれ「災害発生時、各地区で決められた一次避難場所へ向かうのは、徒歩でお願いしたい」とし、「訓練や住宅の耐震化などで日頃から備え、大切な命を守っていただければ」と呼びかけた。
訓練では、4人一組で車椅子の移送訓練を体験。がれきに見立てた障害物を避けながら、ぬかるんだ道を想定した砂場や曲がりくねった道を進んだ。サポート役は声を掛けながら、傾斜や段差のある箇所で車椅子を持ち上げるなどし、いかに安全に移送避難するかを学んだ。

また、運動場のマンホールに設置されている災害用仮設トイレの構造や組み立て方について、市職員が紹介。テントで覆い、個室空間をつくるまでをデモンストレーションした。
この他、津波を想定し、校舎1階から3階へ垂直避難する訓練をはじめ、市消防局協力のもとで、救急救護訓練として三角巾を使った止血法、毛布を活用した担架の搬送法などの実践もあった。県が導入したトイレカーも配車され、住民は熱心に見学した。
車椅子による避難の介助をした70代の女性は「思った以上に力が要った。災害時は今よりも荷物を抱えていると思うので、サポートするのはもっと大変だと思う。気付くことがたくさんありました」と話した。
石井会長(88)は「休みの日にもかかわらず、毎年皆さん熱心に参加してくれる。内容を工夫しながら、何より継続して行うことが大事。訓練を通じて顔の見える関係をつくり、いざというときに備えられれば」と話していた。


