自ら築いた理想の城 二地域居住の熱川さん

完成した家の前で笑顔の熱川さん夫妻
完成した家の前で笑顔の熱川さん夫妻

「紀州富士」と称される龍門山の裾野。眼下には雄大な紀の川が流れ、対岸には和泉山脈を背に和歌山県紀の川市の街並みがパノラマのように広がっている。この絶景に一目惚れし、同市西脇の高台の一角に理想の城を自らの手で築き上げた大阪府松原市の熱川興司さん(67)、真佐代さん(65)夫妻。「頭の中に描いた理想をそのまま形にした」という2人は大阪と紀の川市の二地域居住を満喫している。

興司さんは長年、大阪で電気工事業を営んできた。趣味のパラグライダーや写真撮影で同市を訪れる中、移住を検討。空き家バンクで「家からの眺め」を条件に探し歩き、この物件に巡り合った。

2024年4月に購入し、5月に前の家を解体。7月から2人きりでの建設作業が始まった。

ホームセンターで木材を買い出し、興司さんは自らの構想だけで設計図なしで家づくりを進めた。

壁のクロス貼りや漆喰(しっくい)塗りといった仕上げも全て手作業。「大工さんなら一日で終わる作業に1週間かかることもあった」と苦笑いするが、一歩ずつ理想を形にする工程に、何物にも代えがたい充実感があったという。

約1年の歳月をかけ、2025年8月に待望のわが家が完成した。

延べ床面積は約80平方㍍。間取りは、開放的なLDKに寝室、そして和室を設けた2LDKの平屋を作り上げた。

こだわりは、景色を生活の主軸に据えた設計だ。窓際には外を眺めながらコーヒーを楽しめる特等席のカウンターを設置。目の前に広がるミカン畑や桃畑が花で染まる季節には、色鮮やかな景色が広がる。庭には念願の畑を作り、キャベツやタマネギ、ブロッコリーなどを大切に育てている。

こうした暮らしの中で、地域との絆も深まっている。収穫した野菜を近所へお裾分けすると、お返しに果物をもらうなど、温かな交流が絶えない。家の前を近所の人が通りかかると、一緒にお茶をして話に花を咲かせることもあるという。

真佐代さんは「和歌山の人は本当に温かい。それがここに来て一番うれしいこと」と笑う。

現在は大阪で同居する孫の世話などがあり、平日は大阪、週末は紀の川市でのんびりと過ごす二地域居住を続けている。「静かな場所に住むのが夢だった」という真佐代さん。将来的には拠点を完全に移す予定だという2人。

「四季折々の景色を楽しみながら近所の人たちと仲良く暮らしていきたい」と、四季折々の花と人の優しさに囲まれ、穏やかに流れるぜいたくな時間を夫妻で過ごしている。