故郷で金継ぎ学ぶ 英拠点の陶芸家・岩本さん

橋爪さん㊧に教わりながら筆で継ぎ目を塗る岩本さん
橋爪さん㊧に教わりながら筆で継ぎ目を塗る岩本さん

ロンドンを拠点に活動する和歌山県海南市下津町出身の陶芸家・岩本幾久子さん(55)が、同市の漆芸家・橋爪靖雄さん(91)に、漆芸の伝統技法「金継ぎ」を学んだ。岩本さんは、研修で得た技術を、木製雑貨と陶器をくっつける際や、塗料として使用し作品に反映させる。また、漆を通じて紀州漆器の歴史や美しさを伝え、「文化の架け橋になれば」と話している。

岩本さんは海南高校、帝塚山短期大学工芸美術史コース、同大学専攻科を卒業。陶芸家の故・坪井明日香さんの勧めで2001年に渡英し、英国王立芸術大学院などで学んだ。

1993年には女流陶芸新人賞、2006年にインクルーシブデザイン賞、24年には海南市文化奨励賞を受けるなど、国内外で高い評価を得ている。

岩本さんの作品は、環境問題やサステナブルを軸に制作し、細胞や遺伝子など「ミクロの世界」から着想を得た造形が特徴。粘土を成形後、表面に突起(スパイク)を手作業で施し、緊張感や流れを感じさせる独自の表現を生み出す。視覚障害者や高齢者の意見を受け、触覚でも楽しめる作品づくりに取り組む。

3年前に自然素材のみを用いる漆を知り、「取り入れたい」と学びを深めるため、橋爪さんに依頼した。

今回、陶芸や家具製作などの分野で、高い技術と将来性を持つ作家に対し支援を行う、英国王室設立の奨学金制度「クイーンエリザベス奨学金トラスト(QEST)」に採択され、同市に15日ほど滞在し技術を学んだ。

金継ぎは割れた陶磁器を漆で接合し、乾く前に金粉を乗せ、「再生」させる伝統技法。漆は水分を吸って乾くため、湿度70%で気温20度の環境が理想的。乾かす工程には時間が必要となる。

岩本さんは割れた作品6点を持ち込み、金継ぎを施した。金を磨く作業が大変だったといい「光るまで磨くことや動物毛の筆の扱いが難しかった」と振り返る。橋爪さんは「漆の厚みや金粉の量の配分が重要で長年の経験が必要。岩本さんの筆遣いが器用でびっくりした」と話した。