二地域居住を国民運動に 鶴保議員に聞く推進の意義

地方の課題対応では、高齢化と人口減少に伴う人手不足が、さまざまな分野で立ちはだかる壁であり、その解消が期待される一手が関係人口の創出だ。主な居住地以外にも深く関わる生活拠点を持つ「二地域居住」の推進に長く注力し、自民党「二地域居住推進議員連盟」の会長を務める鶴保庸介参院議員(和歌山選挙区)に、政策の目的や展望を聞いた。
「和歌山で事業をしようと思っても人がいないからやめておく、という状況がある。危機的だ」と鶴保議員は話す。従事者がいないため、実質休業となっている1次産業の組合もあるという。
二地域居住の推進に本腰を入れたきっかけの一つに、地元出身者の行動傾向がある。進学や就職で都市に出た若者はふるさとに戻ってこないことが多い。親が地元に残っていれば、心配して行き来が増えることはあるが、それでも移動コストが壁になり、次第に足が遠のいていく課題がある。「ふるさと住民登録制度」は、特定の地域との絆を公的に可視化することにより、移動支援策と結び付けることができる。
「制度の第一の理由は地域経済の活性化や担い手の確保だが、第二の理由は、地元とつながりたいという人としてのニーズ。移動支援をすることは、社会にとっても個々の人生にとっても大切なことではないか」と意義を話す。
明確な地点登録が重要だと考え、二地域で住民票登録ができる制度の実現にも力を入れてきた。総務省との交渉は難航したというが、2024年1月の能登半島地震が転機となった。被災した能登の住民が金沢市などに避難した際、被災証明書の取得などの手続きのため、現実に住んでいる金沢市から被災地の役所まで出向かなければならず、行政サービスの在り方が問われた。この教訓が、二つの地点での住民票登録を認める方向へ政策転換を促したと鶴保議員は振り返る。
制度の実効性に欠かせない移動支援を見据え、民間企業との連携も進む。県と日本航空は、ふるさと住民登録制度の実証施策を共同で実施する。県内市町村で実施予定の二地域居住プログラム参加者を対象に「ふるさと住民アプリ(試用版)」を先行配布し、利便性の検証を行う他、アプリ利用者を対象に、マイルキャンペーンを展開して利用促進を図る。
また、日本航空とJR西日本は、二地域居住の推進による関係人口の拡大に取り組む協定を4月に締結している。
二地域居住推進議連には東京選出の議員も参加。これ以上の東京一極集中を望まない考えであることに加え、「都市生活での社会的疲弊に対し、地方で自然や地域のつながりにふれることが解決策になりうる」との認識が共有されているからだという。
税制の問題など今後の課題も多いが、県でのモデル事業開始を受け、鶴保議員は「たくさんの人に登録してもらい、国民運動になるように盛り上げていきたい。週末は和歌山に帰るんだ、能登へ帰るんだというような関係人口を増やしていきたい」と話す。


