銀幕飾ったラジオ 内田さん所有、ワインバーで展示

映画にラジオを提供した内田さん
映画にラジオを提供した内田さん

中東情勢が緊迫するさなか、ホルムズ海峡を通過して帰国したタンカー「出光丸」。所有する親会社の出光興産㈱の創設者、出光佐三をモデルにした映画『海賊とよばれた男』(2016年、原作・百田尚樹)に、和歌山市の内田孝さん(84)が所有するラジオが登場する。同市畑屋敷円福院西ノ丁のワインバー「メロウ」のギャラリーで内田さんのラジオ4点が今月末まで展示されており、日本の戦後の歩みを和歌山で垣間見ることができる。

同映画は、戦前から戦後にかけて石油メジャー(巨大資本)と対峙(たいじ)し、「石油王」と呼ばれた出光佐三の戦後の功績にまつわる実話を基に作られた。主人公・国岡鐵造は、戦後の絶望的な状況の中、一人も社員を解雇せずに会社を存続させようと決意し、最初に着手したのが「ラジオの修理・販売」。内田さんのラジオは物語の鍵となるのはもちろん、さまざまな舞台セットにも使われている。

展示品の一つが「明聴2号受信機」。1945年ごろに製造されたもので、劇中では銀行からの融資を受けようと行員らの目の前で修理される印象的な場面に登場する。

35年ごろに日本電波工業研究所で製造された「吉田式スタンドラジオ」は、照明用ランプが組み込まれた希少なもの。映画では、社長室の調度品として置かれている。当時の価格は65円(現在の価値で約15万円相当)に上る高級品で、95年にテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」が同市内で出張鑑定をした際に注目を浴び、スタジオ鑑定へとつながった一品でもある。

他にも、時計の文字盤が印象的な日本電波工業研究所製の「置き時計型ラジオ」や、映画「ゴジラ―1・0」に使われたドーム型の「国民型受信機」も見ることができる。

内田さんは同市出身。小学3年生の頃からラジオが大好きでラジオ放送と共に育ってきた。中学生の時、真空管を使ったポータブルラジオ作りに没頭。和歌山工業高校電気科を卒業後、奇遇にも丸善石油(現・コスモ石油㈱)に就職し、下津製油所に勤務した。ラジオへの興味は冷めることなく、骨董市で古い型式を探したり、知人から依頼を受けたりして、修理して復活させてきた。「修理して音が出るようになるのは楽しいし、皆喜んでくれた」という。

91年に市立博物館での催しに出展して報道に取り上げられ、ラジオ収集家らの間でも話題の人となったことで、映画制作会社から相談が来るようになった。

内田さんは「映画のいろんな印象的な場面を飾ってくれた。『使ってくれてありがとう』の一言です」と話している。

同店の楠山朗生店長(59)は「月替わりで展示していて、アンティークな店の雰囲気を楽しんでもらえたら」と呼びかけている。

希望すれば店内でラジオを聴くことができる。

問い合わせは同店(℡073・423・1717、午後7時~午前0時、月曜定休)。