800年の歴史を持つ「なれずし」

独特の匂いが特徴の「なれずし」
独特の匂いが特徴の「なれずし」

前号では「こけら寿司」の歴史と特徴を取り上げた。和歌山には海の幸を生かした数々の郷土料理があるが、県外の人からも知られる存在であるのが「なれずし」だ。

なれずしは、主に有田地域で親しまれる郷土料理。ラーメン店などでテーブルに置かれている「早なれずし」の原型となるもので、サバと米を用いて作られる。

800年以上の歴史があり、日本三大なれ寿司の一つとされる。そもそもの成り立ちは、貴重なタンパク質を摂取できるよう、米の発酵作用を利用した保存食である。次第に保存食の役割が薄れ、祭事などで振る舞われる郷土料理となった。秋祭りの前夜、当日、翌日の3日間、食事の際に1人1本ずつ配られ、客人には生姜と甘酒を添えてもてなすという、地域ならではの風習も併せ持つ。

作り方は、1カ月以上塩漬けにしたサバを塩抜きし、塩を加えて炊き上げた米の上にのせ、握りこむ。使用する米は、その秋に取れた新米ではなくあえて古米を使うという。古米の方が、粘りが出て硬く握ることができるのがその理由とされる。

握られたすしはアセなど殺菌効果のある葉を巻き付け、しっかりとひもでくくる。それを樽に敷き詰め、重石をのせて5日ほど漬け込むと出来上がる。地域によって使われる葉が異なり、日高や有田ではアセ、旧吉備町ではアセやバレン、旧清水町ではバショウが一般的。

漬け込みの日数がたつにつれ、次第に発酵が進んでくると独特の匂いが立ち込める。発酵食品の匂いが苦手な方には敬遠されがちだが、地域性の強い逸品。

食べやすさを追求した早なれずしが広まり、なれずしは「本なれずし」と呼ばれるようになったが、元祖の味を受け継ぎ、親しむことも、郷土料理を後世に伝えていく上で大切だ。(次田尚弘/有田川町)