現代でも発展を遂げる「早なれずし」

前号では、有田地方で親しまれ、800年以上の歴史を持つ「本なれずし」の歴史と特徴を取り上げた。独特の匂いが苦手という方が多く、食べやすさを追求して生まれたのが「早なれずし」だ。
早なれずしの特徴は、サバを発酵させない、あるいは発酵させても短時間であること。調理の工程は本なれずしと変わりないが、酢や砂糖で味を調え、重石を乗せて漬け込む期間は数時間から1日程度。これにより、本なれずし特有の匂いがなく、サバの旨味と酢飯のバランスが取れたものになる。
早なれずしが生まれたのは1700年ごろ。大阪や京都を中心に箱寿司が人気を博し、本なれずしをアレンジして作られたのが始まりとされる。近年になって考案されたものかと思いきや、既に300年以上の歴史がある。
本なれずしと同様に、地域の秋祭りで振る舞われてきたが、有田地方に限らず和歌山市などで年間を通して手にする機会がある。その理由は和歌山ラーメンとの相性の良さ。こってりとした豚骨しょうゆがベースのラーメンに、酢やショウガで締めた早なれずしのさっぱりした味わいが、双方のうまみを引き立てる。
ラーメン店で普及した理由は他にも。屋台や小さな店舗が多く、ラーメンが提供されるまでに時間を要することから、待ち時間に客の小腹を満たすため、卓上に早なれずしやゆで卵が置かれるようになったとされる。
800年前に生まれた本なれずしと、300年前にアレンジされて生まれた早なれずし。百年単位の大きな歴史の変化の中で、いずれの伝統も郷土料理として地域に根差し、近年になって和歌山ラーメンとの融合を果たした。次の百年も、地域の食文化と共にその伝統と味わいを継承したい。(次田尚弘/和歌山市)

