清水地区の郷土料理「わさび寿司」

わさび寿司(写真提供:和歌山県観光連盟)
わさび寿司(写真提供:和歌山県観光連盟)

前号では「本なれずし」から食べやすさを追求して生まれた「早なれずし」の歴史と特徴を取り上げた。和歌山県内にはその技術を生かした郷土料理が他にもある。今週は有田川町で全国から注目を集める「わさび寿司」を紹介したい。

わさび寿司は有田川町の清水地区(旧・清水町)の郷土料理。わさびの葉を寿司に巻いて作られる、この土地ならではの郷土料理である。この地域では、かつてから田植えや盆、秋祭りなどの機会に、なれずしなどの寿司が作られてきたことは前述のとおり。寿司を一定期間保存するため、抗菌効果がある植物の葉を巻き付けるが、使われる葉は地域によってさまざま。

清水地区では、バショウの葉が用いられることが多かったが、川が奇麗でわさびが多く自生していたことから、わさびの葉が用いられるように。わさびの葉を使った押し寿司も、家庭料理として作られるほど。今は、わさびの葉が手に入りづらくなり、冷凍保存され必要な時に小出しで使うこともあるという。

使用される魚はサバに限らず、アユの甘露煮や、この地域の特産品であるぶどう山椒を使用したものまでさまざま。全国放送のテレビ番組で紹介され、地元で製造販売される店舗を訪れても手に入れることが困難なことも。

しかし、現地を訪れなくとも手に入れることができるチャンスがある。町内の店舗が全国の百貨店の催事に出店。限られた期間であるが、大阪や東京のみならず九州まで、さまざまな都道府県で手にする機会がある。

郷土料理を全国で販売し、食通をうならせる味わいと、わさびが自生するほど美しい環境が残る清水地区の魅力を伝える。食で通じる魅力発信のモデルがここにある。(次田尚弘/有田川町)