昆虫食いかが? 音楽家の今沢さんが提案
将来の世界的な人口増加による食糧難対策の一助と期待される食物をご存じだろうか。コオロギやバッタなどの「昆虫食」。日本でも注目され始めたが、戦後の食料難から飽食に変わった現代では浸透していない。敬遠する声が多い中、意外に若い女性は抵抗が少ないようで「気軽にタンパク質が取れて美容に良さそう」などの声もあるとか。昆虫食が販売された和歌山市のライブ会場に足を運んでみた。
このほど、北新のライブハウス「CLUB GATE」の会場一角に、昆虫食の販売コーナーが設けられた。ネオンがきらめく会場で、ちょっと異質な空間を企画したのは、ライブにも出演した北海道江別市出身のベーシスト今沢カゲロウさん(52)=東京都=だ。
欧米やアジア、アフリカなどを精力的に回り、和歌山市でも20年以上前から年1、2回ライブを開いている。他にも徳島市の四国大学特認教授(音楽)や昆虫画家としての顔も併せ持つ、マルチな才能の持ち主としても知られる。
昨年12月、ワタリバッタの一種、トノサマバッタの粉末が入った「バッタコーヒー」を開発。きっかけは訪問したアフリカのルワンダの近隣国で起きたワタリバッタの大量発生による被害だったという。「食糧難問題やアフリカの現状を知ってもらいたい」との思いから開発に着手。ケニア産コーヒー豆を使い、現地のワタリバッタは農薬の心配などもあったためタイ産で流用して完成させた。
会場には開発したバッタコーヒーの他に、別の業者が製造したコオロギやカイコのサナギ、ハエの幼虫などの昆虫食も並べた。価格は600~1200円。興味深く手にする観客もいる一方、コオロギやカイコは、形がはっきり残ったまま乾燥されているとあって遠巻きに眺める姿もあった。
記者が実際に試食してみたが、意外にもにおいは気にならず、スナック菓子のような感覚。みそなどで味付けされていて、正直、形さえ気にしなければおいしく食べられる。バッタコーヒーはアフリカの高級豆を使っているため風味がとても良く、バッタの粉末が入っていることは全く気にならない。「ワタリバッタの主食である草の味が感じられる」という今沢さんの言葉を聞いて、後味に草のにおいがしたような気がした。
今沢さんによると、EU(欧州連合)ではトノサマバッタが食品として既に認証されているという。気候変動や紛争などによって、食料危機はいつ起こるか分からないのが今の世界情勢。今沢さんは「世界を知るきっかけとして、昆虫食に興味を持ち、実際に味わってほしい」と訴える。
今沢さんのバッタコーヒーはドリップパック10㌘1袋入り700円。購入特典も用意されており、問い合わせは今沢さんの公式サイト(http://www.bassninja.net/)。