被災後の支援を知ろう 制度学ぶ防災講座
多様な分野の女性が集まり、和歌山を元気にしようと活動している「和歌山イコール会議」(松原敏美代表)は、第8回防災セミナーをオンラインで開き、災害で被害を受けた場合に備え、被災後の生活再建の支援制度について約60人がクイズ形式で考えながら学んだ。
講師は昨年のセミナーに続き、静岡県の弁護士、防災士の永野海さん。永野さんは、被災後の生活再建に活用できる支援制度を具体的に考えるためのツール「被災者生活再建カードゲーム」を考案し、今回は、支援に取り組んでいる同県熱海市の土石流災害を事例に、支援制度を具体的に紹介し、利用する際のポイントなどを解説した。
永野さんが参加者に最初に投げ掛けたのは住まいの問題。被災後は、数日から数カ月の避難所生活、原則2年以内の仮設住宅、その後に住宅再建などの変化が考えられる。
避難所の収容人数には地域差があり、静岡市は人口の17%の収容が可能なのに対し、東京都新宿区では人口の1・8%にとどまる。永野さんは、自分が住む自治体の状況を調べることを勧めた。
土石流で被災した熱海市伊豆山地区の住民で、同地区内の仮設住宅を選べたのは約30%にとどまる。被災した地域で仮設住宅を選びにくい理由は、建てられる場所が少ない▽新耐震基準を満たす物件でなければならない▽家賃に上限がある▽ペットが飼えない――などさまざま挙げられる。
永野さんは、自治体が被災者に住宅を「提供」する形式をとり続けていることが問題であり、住民の希望と制度の条件がなかなか合わない現状を生み出しているとし、家賃補助の仕組みに転換すべきと話した。
支援制度の多くが住民が申請しないと受けられないことも指摘。支援の内容を左右する罹災(りさい)証明書の判定については、証明書に評価点数は書かれていないが、聞けば教えてもらえること、おかしいと感じたら異議を申し立てられることを伝え、支援を最大限に受けられるよう、制度を知っておくことが重要と呼び掛けた。
永野さんの講演の後、栄養士グループNAGAの三國和美会長による「災害時の食について~調理時の衛生やパッククッキング~」の講座も行われた。