不思議な建築制作 紀美野町のアキラさん

和歌山県紀美野町大角の国道沿い、観光農園「花いちばん」花美山入り口にメルヘンチックな造形物がある。大きく口を開けた顔のようにも見え、屋根には草が生えている。その不思議な外観に「あの建物は一体何?」と道行く人の注目を浴びている。建築したのは、同町の舞台照明デザイナー、アキラさん(66)。手作りしたという自宅におじゃますると、そこには特別な空間が広がっていた。

アキラさんは福岡県出身で、23歳から30年間東京と横浜で暮らし、環境を変えたいと12年前に同町へ移住してきた。

「神々しさを感じ一目惚れした」という土地に、「自分の家は自分で建て、面白くてデザイン性のある小屋にしたい」と、土建築でわらを用いたストローベイル工法で建てた。

直径6㍍ほどの円柱型で、壁はブロック状にしたわらを積み上げ、わらと粘土と水を混ぜて寝かせた発酵粘土を壁に塗った。竹を組んだ屋根は草屋根仕様に。中は広々とした空間が広がり、夏でも涼しく心地がいい。

アキラさんは「小屋作りは一つの造形」と話し、「そこに人が住めば面白いだろうな」という発想でさまざまなものを造っているという。敷地内には他にも、土を袋に入れて積み上げる「アースバッグ」工法の建物も建てた。

現在は土建築に興味を持った人から、ワークショップやデザインを頼まれるようになり「デザイナーとして自分が面白いことができるなら」と依頼を受けている。

「花いちばん」の建物もその一つで、入り口に面白いオブジェを作ろうと、廃材と自然素材をメインに制作。「自分や人に対しても良い影響を与え、建築に関してもワクワクした直感で建てていくと高次元の建物ができる。自称ワクワク波動建築工法で建てています」と笑顔で話す。

地球の原風景をイメージし、タイトルは「緑の惑星」。草屋根には花美山の赤土を使用し、竹やわらを取り入れモコモコ感を出した。

見たことがないものや考えたことがないようなものに出合ったとき、人の心が動くのだといい、建造物としての水平や垂直を考えずに建てた。

アキラさんは「美しかったり、人間の感性に訴えられたりするものと一緒に住むことで豊かな人になれる。いろんなものを想像して何か面白いものを作っていく過程がすごく楽しい。誰もやったことがない、見たことがないものを造っていきたい」と今後の夢を話している。

 

土建築で建てた自宅