女性の視点で防災強化 和歌山市が取り組み
防災対策の充実に向けて女性の視点を取り入れようと、和歌山市は24、26日、女性職員だけを対象とする初めての図上訓練とワークショップを行った。平時の備えから、災害発生時の避難生活、復旧・復興などの各段階において、男女のニーズの違いや異なる配慮の必要性などを反映し、対応力の強化を目指すとともに、災害後の復興の在り方についても活発に議論した。
24日は避難所運営図上訓練を行い、危機管理局の職員や各局の代表ら17人が参加。県が作成した防災学習教材「きいちゃんの災害避難ゲーム」を使い、台風接近に伴い大規模な風水害が発生した想定で、カードに記された避難所内外で発生する課題やトラブルの対応について、4~5人のグループごとに話し合いながら訓練した。
カードには、授乳室や更衣室の設置場所、高齢者の生活スペースの確保、感染症の疑いがある人の対応、スーパーから提供された弁当の配布方法、車中泊を希望する人に伝える注意事項などさまざまな課題が記され、参加者は制限時間内に結論を出し、回答に応じて得られるポイントを競った。
訓練後は、振り返りの討議で出た意見をグループごとに発表。女性だけの避難スペースを設置する▽女性用品の配布は女性が行う▽おむつや生理用品の種類、サイズを充実させる▽体を拭くシートやドライシャンプーも備蓄する▽メイク落とし、髪どめ、離乳食なども必要▽子育て中の人も避難所運営に参加できるよう工夫する――など多様な意見があった。
26日は、市が9月末をめどに策定を進めている「事前復興計画」に生かすことを目的に、南海トラフ巨大地震を想定し、復興時に目指すべき市の姿についてワークショップ型式で話し合った。
15人が参加し、市の白地図の上に地域の特色ある資源を付箋に書いて貼り付けていき、浸水想定地図と重ね合わせた上で、復興に必要な要素を検討。住民の安心・安全のため、高齢者は便利な市街地に、津波浸水区域の住民は高台に居住エリアを移すこと、景観や既存の観光資源を残しつつ、人を呼び込める新たな魅力づくりを進めることなどの意見があり、「命を守る 最新とレトロの融合」「クオリティオブライフ 爆上げ和歌山市」などの復興スローガンが発表された。
市は女性職員の意見を参考に、避難所運営マニュアルや備蓄品選定の見直し、事前復興計画の策定に反映させる方針。
総合防災課の柳瀬由貴さんは「男女混合で実施すると男性主体となることが多く、女性の視点での意見を聞きたかった。独身、妊婦、子育て、介護などいろいろな背景の女性が参加し、自分では思い付かないことも聞かせてもらえて良かった。防災への女性の参画の大切さを感じた」と話していた。