選ばれる高品質への挑戦 DUPLO山東②
【①の続き】デュプロ山東は、社内の壁に「品質を誇る企業に明日がある」とのスローガンを中国語で掲げている。
生産部門・業務部門の部長を兼務する趙斌さんは、「社内の品質レベルの要求が高いことに、新入社員は驚く。働く中で、メーカーにとって品質がいかに大事かという意識が、社員の身に付いていく」と語る。
デジタル印刷機の生産ラインは、大型製品と中小型製品で分かれている。
どちらもまず、製品を機能によって分割したユニットを部品から組み立て、さらに各ユニットを取り付けて製品に仕上げていく。組み立てに問題がないかを検査し、印刷などのテストをした上で機械を調整し、清掃、梱包して出荷の準備はようやく整う。検査や確認の項目は数百に及び、厳密な品質管理を行っている。
生産管理にAGV 工程係でミス防止
毎日、安定した生産台数を確保するため、生産ラインにはさまざまな工夫が凝らされている。
中でも特徴的なのはAGV(無人搬送車)の使い方。AGVには幾つもの台車が連結され、従業員は台車に乗って運ばれてくる機械に、ユニットの取り付けや検査、調整など各工程の作業を行う。
現場には、作業の残り時間が電光板で表示され、時間が来ると、AGVが総重量2㌧近くにもなる台車を引いて、次の工程に自動的に移動させる。一部の工程の遅れにより、全体の作業が止まる事態を防ぐ工夫だ。
従業員は時間内に自分が担当する作業を終えることを意識できるため、作業時間のばらつきがなくなり、会社は日々の生産台数を管理しやすくなる。
生産ラインを安定させるもう一つの工夫は、「工程係」の配置。組み立てを担当する従業員に、必要な部品を運ぶ専任の役割となっている。
以前は、組み立て担当者が部品を取りに行く作業を兼ねていたが、部品の付け忘れや、似た部品の付け間違いなどが発生するリスクがあった。工程係を導入し、必要な部品をチェックした上で組み立て担当者に渡すことにより、付け忘れなどがあれば部品が余るため、その場ですぐに分かり、ミスは大きく減少した。
多くの部品を管理し、組み立てなければいけない生産現場では、機械化が難しい部分も多い。「人の手に頼らなければならない仕事だからこそ、働きやすい環境でミスを減らし、品質を良くするための工夫が必要」と佐野さん。そのために何をすればいいか、日々考えている。
高品質への取り組みは従業員にも好影響を及ぼしている。国営企業時代から30年以上勤務している副総経理(副社長)の申振華さんは「職場環境は良く、良い商品を生産できており、自分の会社を発展させたいと思っている資質の良い社員が多い」と胸を張る。
会社が長期にわたって発展する条件として、良い製品、良い人材、法に従った経営の3点を示し、日本企業らしい法令順守を重視する姿勢、コンプライアンス面の堅実さも自社の強みに挙げる。
和歌山県と山東省の友好関係の発展とともに歴史を刻んできた企業として、デュプロ山東は、中国各地に築いてきた地盤と信頼をさらに広げる活動を続ける。
佐野さんは、自社に関わる人々や機関に対し、「手を携え、共に創造し、成果を共有する〝ウインウイン〟の関係を築いていきたい」と話している。