政権選択の短期決戦 県内選挙区に10陣営

第50回衆院選が15日、公示された。区割り見直しにより和歌山県内小選挙区が3から2に減少して初めて行われる選挙で、2選挙区に計10陣営が立候補した(午後3時現在)。岸田前政権の退陣につながった自民党派閥の裏金問題、政治資金の在り方などが争点となり、1日に就任したばかりの石破茂首相の下、逆風を受ける自民・公明両党が過半数(233議席)を維持できるかが焦点。27日の投票日まで12日間の舌戦が展開される。

県内の新しい小選挙区は、1区が和歌山市、紀の川市、岩出市の3市、2区は3市を除く県内27市町村となった。

1区に立候補したのは届け出順に、日本維新の会前職の林佑美候補(43)、立憲民主党新人でコンサルティング会社経営の村上賀厚候補(65)、参政党新人で食品販売店経営の林元将崇候補(26)、自民党新人で前和歌山市議の山本大地候補(33)、共産党新人で元和歌山市議の井本有一候補(58)の5人。

2021年10月の前回衆院選の旧1区では、日本維新の会を除く主要野党が候補者調整などで連携し、自民との一騎打ちの構図に持ち込み、野党が勝利。23年4月の衆院補選で維新が議席を奪取し、野党間の協力が前回よりも後退した状況で迎えた今回は、5党の候補がしのぎを削る構図となった。

立候補の受け付けは県庁北別館4階で午前8時半から午後5時まで行われた。各陣営は代理人らが届け出を済ませ、駅前や選挙事務所などで有権者への第一声を上げた。

14日現在の県内の選挙人名簿登録者数は77万6047人(男36万3195人、女41万2852人)で、2021年10月の前回衆院選より2万6948人(3・36%)減となっている。

2区は元県議で共産党新人の楠本文郎(70)=御坊市=、前和歌山市議で立憲民主党新人の新古祐子(52)=和歌山市=、自民党の二階俊博元幹事長の三男で同党新人の二階伸康(46)=田辺市=、政治団体「鼎立(ていりつ)の党」代表で同党新人の高橋秀彰(42)=兵庫県丹波市=、自民党元参院幹事長で無所属新人の世耕弘成(61)=新宮市=の5氏が立候補。二階氏と世耕氏の保守分裂の激戦となり、他の3陣営がそれをどう切り崩すか。各候補は第一声で人口減少や経済対策、政治資金問題を訴えた。


各候補の第一声(届け出順)

1区(定1―候5)

林佑美候補(43)維前①

本気の改革で信頼を

衆院の予算委員会で裏金問題について質問してきた。政治資金収支報告書の不記載分は、皆が確定申告をするのが筋であり、収支報告を修正するだけで済まされるのは国民感覚からかけ離れていると言わざるを得ない。今回の選挙では、国民の信頼を取り戻すための本気の政治改革ができるかどうかが問われている。私は当選以来、政治資金パーティーは一切行わず、企業・団体、個人からも一切献金を受け取らず活動してきた。これは今後も変わらない。支援を受けた誰か、献金を受けた誰かに配慮した政治をするのではなく、皆さま一人ひとりの気持ちに寄り添った、クリーンでしがらみのない政治を行いたい。皆さまと一緒に、豊かで楽しく暮らせる和歌山、そして日本の国をつくっていきたい。12日間、本気の改革を訴えていく。支援の輪を広げ、最後の最後まで支えていただきたい。


村上 賀厚候補(65)立新

庶民を豊かで幸せに

人が苦しむ中でGDP(国内総生産)が高くても何の意味もない。日本のGDPのうち半分以上が個人消費。それが上がらないと結局はジリ貧になっていく。企業がもうかっても、富裕層が増えても消費は増えない。そうじゃなくてわれわれ一般の庶民が豊かになったら、ご飯を食べたり、買い物したり、レジャーに行ったり、いろいろできる。みんなが豊かになって、それで企業がもうかって、街が潤って、税収が増えて、また皆さんに還元できる。なんでこれに気付かないんでしょうね。それは大きな権力。力を持っている人たちは、まず自分たちを大事にしてくれと言うから。変えることはそんな難しい話じゃない。人々の幸せを高めていくためにこれまで培ってきたいろんな経験を生かし、人々が豊かさと幸福感を実感できる、そういう当たり前の政治を皆さんとつくり上げていきたい。


林元 将崇候補(26)参新

民意を反映する政治を

26歳で選挙活動を始めた当初、26歳に何ができるんやなどと多くの人から批判的な声を浴び、鼻で笑われた。そんな悔しさをバネに「和歌山をなめるな!」「若者をなめるな!」をテーマに掲げ、選挙戦に挑む。まずは失われた30年で衰退した経済を取り戻すための政策に取り組む。一生懸命に働く国民の所得を増やすため、積極財政を用いて減税を目指す。今の大きな政党は利権やしがらみによって、本当に国民の求めていることをやらず、そんな日本の政治に絶望している。今のおかしいことだらけの政治に真正面から体当たりしていく覚悟を持っている。組織票や利権票だけで勝てるような選挙では国民の民意が反映されない。参政党は地方議員137人、国会議員1人のまだまだ小さな政党だが、次世代に良い形でバトンを受け渡すため、国民の思いや声を政治に反映していく。


山本 大地候補(33)自新

故郷への思い第一に

県内の小選挙区が3から2に減らされたことに対し、地方の声が中央に届かなくなるのではないかと危機感を抱いている。だからこそ2分の1のうちの一つは、和歌山のために働くという思いを持った人間が当選しなければならない。自分ならできると信じている。国会議員の仕事は多方面にわたるが、故郷和歌山のことを第一に思って行動し、政策を実現するという思いが何よりも大切だと考えている。33歳で知識や経験は足りないかもしれないが、労働人口のど真ん中に差しかかる年齢であり、自分自身が経験し感じたことを国政に生かせられることは若さ故の強みだ。11月に生まれてくる子どものために、かっこいい親、大人になるため、和歌山のために挑戦したい。若さと情熱、笑顔と元気を持ち、県民を思って働く気持ちだけは誰にも負けない。多くの声を聞き自身の考えを伝えていく。


井本 有一候補(58)共新

国民の命と暮らし守る

6月に能登半島を訪れた。倒壊した建物が、地震当日のままの状態だった。あちこちで土砂崩れが残され、その土砂が豪雨で流され甚大な被害をもたらしたと言われる。どうして復興が遅くこれまで国は何もしてこなかったのか怒りを覚える。国が責任を持ち取り組むべき。石破首相は解散前、国会で平和憲法を変えることを宣言した。憲法9条は日本の宝。私の祖母は和歌山大空襲の焼夷弾で顔や体にやけどを負い、生死の境をさまよい顔に傷痕が残った。偏見などでつらい思いをし戦争は絶対に嫌だと言っていた。祖母の意思をくみ戦争反対を貫く。軍事的挑発に軍事的に対応すれば戦争になる。ASEAN(東南アジア諸国連合)と協力し日本の周りでも平和な地域をつくっていこうと日本共産党は提言している。政府の進める戦争への道を止め、私たちの命と暮らしを守る政治に切り替える。


2区(定1―候5)

楠本 文郎候補(70)共新

消費税は将来的に廃止

楠本候補は御坊市の旧きのくに信用金庫前で出陣式を行い、支持者ら約100人(主催者発表)が集まった。第一声で政治とカネの問題を取り上げ、「今回の総選挙で一番問われているのは裏金問題で、クリーンな政治を求める庶民には考えられないこと。私は共産党議員として御坊市議で35年、御坊市選出の県議会議員を4年務め、私利私欲なく庶民のために働いてきた」と強調。消費税についても言及し、「物価高の上に消費税をかぶせることは今や生存権さえ脅かしている。緊急に消費税を5%に引き下げ、将来的には廃止していく方向を目指す」とし、「30年以上賃金がほとんど上がっていないのが現状。全国一律で最低賃金1500円の実現が必要」と訴えた。財源に関しては「大企業の内部留保の5年分に課税するだけで10兆円の財源ができる。この財源を全額中小企業の賃上げに使う」と述べた。ほか、教育の問題、第1次産業の衰退などにも取り組む決意を見せた。最後は全員で「ガンバローコール」で力強く締めくくり、街宣車で出発し、支持を呼びかけた。


新古 祐子候補(52)立新

今が変われるチャンス

新古候補は出陣式は行わず、県内各地へ〝思いを伝える〟活動を展開。海南駅前で七つ道具が到着した午前9時半ごろ、力強く第一声を放った。「和歌山2区は世界遺産を有し、歴史と伝統がある地域。今は少子高齢化、産業の転換期、若者の都市部流出など問題が山積している。今が転換期、和歌山の未来を考え立候補を決意した」と述べ、「今の政治のままでは何も変わらない。和歌山のため、皆さんのため、新しい風、女性らしい風を和歌山2区に吹かせたい」と力を込めた。保守分裂となった選挙戦について、「二大巨頭に挑む形になっている。しかし、黙っていてはだめ。誰かがやらなければ和歌山は変わらない。今が変われるチャンスで、間違っていることを間違っているという土壌をつくらないといけない。少しでも和歌山が変われるよう〝私でよければ〟と立ち上がった」とし、「この選挙戦を全力で務め、闘う姿勢を有権者の皆さんに知っていただきたい。それが国や地域を変える動きにつながると思っている」と強調した。


二階 伸康候補(46)自新

地方に元気と活力を

二階陣営は田辺市扇ケ浜の事務所前で出陣式を行い、支持者600人超(主催者発表)が集まった。選対本部長の鈴木太雄県議会議長は「伸康さんは『ふるさとを守りたい』、その一念で血のにじむ努力をしてきた。自民党を離党した幹部が出馬し、県民を分断する戦いになったことは非常に残念」とし、鶴保庸介参議、財務大臣政務官の進藤金日子参議、下宏副知事、真砂充敏田辺市長も共闘を誓った。二階候補は自民党の政治資金問題について「心から深く反省し、信頼回復に努めなければならない」とし、今回、保守分裂の戦いになったことには「非常に申し訳ない思いだが、私は党公認をいただいた身であり、何としても政権とこの地域のパイプを守らせていただきたい」と訴え、「立候補から27市町村をずっと歩き続け、いろんな声を直接聞かせていただいた。東京に人口や物が集まる一極集中を放置していいわけがない。もう一度、地方に元気と活力が戻る政治をさせていただきたい。ふるさとへの思いはだれにも負けない」と声を張り上げた。


高橋 秀彰候補(42)鼎新

「真の保守」の政治へ

高橋候補はJR紀伊田辺駅前で第一声を放ち、現政権に対し「偽物の保守だ」と非難し、「真の保守とはこの国の土地、環境、自然を愛する心」と訴え、支持拡大を呼びかけた。まず二階俊博元幹事長について「中国との関係を深めてきたが、結果的に東京では多くの不動産を中国の方が所有し、田辺、白浜のホテルでも中国の方のオーナーが多くなった。これは巡り巡ってわが国の国益を損なうことになる」と指摘。世耕候補については「ゲノム編集を推進しているが、まだ環境への影響が判然としない技術だ」として非難。さらに自民党についても「日米安保のための組織、アメリカの出先機関で、アメリカの言うことを丸呑みしてきた」と批判し、「金もうけやGDPを上げるなど、経済優先に取り組み、結果的に経済は下向きになっている。この政策に反省しない現政権に強く異議を申し立てたい」と声を張り上げた。この日は、この後新宮市の事務所でも演説を行った。日高地方には18日か19日ごろ入る予定となっている。


世耕 弘成候補(61)無新

もう一度、活躍させて

世耕候補は海南市の事務所をトップに出陣式を行い、司会の神出政巳市長や県議らが支援を呼びかけた後、第一声。政治資金問題にお詫びしたうえで、内閣官房副長官、経済産業大臣、自民党参院幹事長の11年間を含む26年間の政治経験をアピールし、「全て失った私ですが経験と人脈を生かし、もう一回、和歌山、国のために働けと言ってもらえるか、謙虚にお伺いしていく選挙」と力を込めた。人口減少のストップや対応を政策の一丁目一番地とし、少子化対策や教育体制強化に取り組むとともに、製造業の国内回帰、農林水産業の高付加価値化と就労支援、観光産業での「質の高い雇用の創造」を強調。医療や防災の充実も訴えた。持病で第1次政権時に辞任、その後、首相に返り咲いた故安倍晋三元総理の形見の靴をはいての選挙戦。「失敗し、全てを失ったが、私も諦めていません。この選挙戦を勝ち抜くことで再び立ち上がり、もう一度、政治の中枢で国、和歌山のために活躍していきたいと決意して戦っていく」と声を上げた。