宇宙事業の新時代へ カイロス2号機打ち上げ
日本初の民間小型ロケット射場「スペースポート紀伊」(和歌山県串本町)で14日午前11時、カイロスロケット2号機の打ち上げが行われる。3月13日の初号機の失敗から9カ月の短期間で迎える2度目の挑戦。2号機には人工衛星5機が搭載され、成功すれば国内初の民間単独での人工衛星の軌道投入が実現し、日本の宇宙事業は新たな段階を迎える。
カイロスは全長18㍍、重さ23㌧、機体の外径1・4㍍の3段式固体燃料ロケットで、最上部に人工衛星を搭載するスペースがある。標準的な人工衛星の軌道である太陽同期軌道に高度500㌔で打ち上げる場合、重さ150㌔までの小型人工衛星を積み込むことができる。
世界最短の打ち上げをサービスの柱とし、通常は2年程度かかるとされる契約から打ち上げまでの期間は1年、衛星の受領から打ち上げまでは4日。従来より簡便、低コストで人工衛星を打ち上げられる「宇宙宅配便」を目指し、1カ所の発射場では世界最高頻度の年20回の打ち上げを目指し、2030年代には年30回を目標に掲げている。
2号機に搭載するのは、テラスペース㈱(京都府京田辺市)、合同会社Space Cubics(札幌市)、㈱ラグラポ(東京都中央区)が支援する広尾学園中学校・高校(東京都港区)の国内3者と、台湾唯一の公的宇宙機関「Taiwan Space Agency」(TASA、台湾国家宇宙センター)の衛星で、もう1機は非公開。
テラスペースは、初めて開発した50㌔級の小型衛星「TATARA―1」を打ち上げる。醍醐寺塔頭菩提寺(京都市)の依頼を受けた宇宙寺院「劫蘊寺(ごううんじ)」や、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した小型リフレクター「Mt.FUJI」など複数の機器を搭載し、軌道上で実証を行うとしている。
劫蘊寺は、宇宙初の寺院として設立するもので、宇宙からの目線で地球全体の平和や安全を見守るとし、仏像や曼荼羅が搭載されている。
他の4機はいずれも超小型のキューブ衛星となっている。
スペースポート紀伊を運営するスペースワン㈱の豊田正和社長は「利便性の高い衛星を打ち上げ、宇宙産業の発展に貢献していきたい。今度こそという思いでいる」と話す。
打ち上げ時刻は、天候などに問題がなければ14日午前11時ちょうどの予定。打ち上げの53分35秒後から順次、衛星をロケットから分離し、最後の衛星分離は54分01秒後を見込んでいる。
当日は、多くの見学者で周辺の混雑が予想される。JR西日本は、きのくに線の紀伊田辺―新宮間で臨時の普通列車10本を増発する。
交通規制は前回よりも強化し、スペースポート紀伊周辺地域協議会による公式見学会場、田原海水浴場(串本町)と旧浦神小学校(那智勝浦町)の2カ所の前後3㌔の国道42号は全て駐停車禁止となる。