松澤佑次さんら4人に 24年度県文化表彰

和歌山県の文化向上、発展に貢献した人や将来一層の活躍が見込まれる人に贈られる2024年度県文化表彰の表彰式が10日、県庁正庁で行われた。「文化賞」に田辺市出身の医学者・松澤佑次さん(83)=兵庫県宝塚市=が選ばれたのをはじめ、受賞者は4人。岸本周平知事が一人ひとりに表彰状と徽章(メダル)、副賞を贈り、功績をたたえた。(写真は県提供)

「文化功労賞」は動物生態学者の堀道雄さん(76)=和歌山市=、「文化奨励賞」はバイオリン奏者の北島佳奈さん(43)=和歌山市=、和歌山市出身の画家・田中秀介さん(38)=大阪市=に贈られた。

文化賞の松澤さんは「私の長年の研究を故郷から評価していただいたことに望外のうれしさを感じている。一貫して、生活習慣病の原因究明と対策のための研究を続けてきた。その中で、同郷の南方熊楠が示された、日本人の誇りを基盤にした世界への発信を参考にしてきたように思っている」とコメントしている。

受賞者の主な経歴と功績は次の通り。


松澤佑次さん

【松澤佑次さん】

県立田辺高校、大阪大学医学部を卒業し、同大第二内科講師、第二内科主任教授、医学部付属病院長を歴任。糖・脂質代謝を中心とした内分泌代謝学研究、生活習慣病対策をライフワークとし、皮下脂肪ではなく、腹腔内脂肪(内臓脂肪)の蓄積が多くの生活習慣病や心血管病の原因になっていることを突き止めた他、抗糖尿病作用、抗動脈硬化作用などを持つアディポネクチンを発見し、内臓脂肪蓄積によるアディポネクチンの合成低下が、生活習慣病発症の要因になることを明らかにした。

2003年にはメタボリックシンドロームの概念と診断基準を発表。国の健康政策に取り入れられ、08年から特定健診として実施されるなど、社会に広く浸透している。


堀道雄さん

【堀道雄さん】

大分県日出町に生まれ、京都大学理学研究科博士課程を修了。1977年から県立医科大で生物学の教鞭をとり、助手、講師、助教授を務めた後、94年から京都大理学部動物学教室で助教授、教授を歴任した。

魚類など水生動物についての独自の研究により、全ての個体が右利きか左利きのどちらかであり、捕食・被食関係において少数派が有利となることから、左右二型の比率は周期的に変動し、多種が共存することを発見。新たな分野を開拓して発展させた。

ハンミョウ類の生態研究では、希少種のヨドシロヘリハンミョウを白浜町の日置川河口で発見。同種の分布の東限であり、県の天然記念物指定にあたり、多くの助言を行った。


北島佳奈さん

【北島佳奈さん】

和歌山市生まれ。4歳からバイオリンを始め、京都市立芸術大学卒、同大学院音楽研究科修士課程を首席で修了。大学院在学中にドイツのフライブルク音楽大に留学し、ベルリン・ストリングマスターコース(ダニエル・バレンボイム音楽監督)で最優秀好演奏賞を受賞。

帰国後は兵庫芸術文化センター管弦楽団に所属し、ソロ活動も展開。音楽にふれることが少ない地域や施設に出向いて演奏を披露するアウトリーチ活動に積極的で、全国各地で演奏している。2022年には和歌山キッズオーケストラを設立し、代表として幼稚園児から高校生までの団員を熱心に指導するなど、地域に寄り添った活動を継続している。


田中秀介さん

【田中秀介さん】

5歳まで和歌山市で過ごし、貴志川町(現・紀の川市)で育つ。大阪芸術大学付属大阪美術専門学校美術工芸学科絵画専攻を卒業し、同大に編入、美術学科油画コースを卒業。

2009年に初の個展「信じがたい部分」を開催し、数々の個展やグループ展で作品を発表。自身が目にした光景の中から気になった場所、違和感、なぜか目を離せなかったものなどを主題としながら、感情のゆらぎをも描写するという困難な課題を、さまざまな技法を用いて作品に結実させている。

23年には、40歳以下の若手作家の中から未知の優れた才能を紹介する現代美術展「VOCA展」の出品作家の1人に選ばれ、全国的にも注目を集めている。