地域で親しまれる「柿の葉寿司」

様々な柿の葉寿司(㊧サケ㊨昆布締めのタイ)
様々な柿の葉寿司(㊧サケ㊨昆布締めのタイ)

前号では、熊野灘で取れたサバが山間地域に運ばれ、郷土料理となった「柿の葉寿司」の歴史と文化を取り上げた。サバを起点に始まった柿の葉寿司だが、現在はさまざまな食材を使ったものが販売されている。今週は地域性のあるバラエティー豊かな柿の葉寿司と、それぞれの食材が採用された経緯を紹介したい。

柿の葉寿司の詰め合わせに入っている代表格ともいえる存在が「サケ」。100年程の歴史があるとされ、文豪・谷崎潤一郎の小説にも登場し、塩気がサケに染み込み柔らかくなったさまを絶賛している。サケが使用された経緯として一説には、林業が盛んな吉野地方に全国から労働者が集まり、労働者の田舎から日持ちがする魚として「塩サケ」が届き、それを柿の葉寿司に使用すると味わいが良く、地域に根付いたとされる。

続いては「タイ」。こちらは和歌山の海で盛んに取れる魚である。これは、柿の葉寿司が生まれた経緯とつながってくる。ハレの日のめでたい場で振る舞われるものであることから、「めでたい」との語呂合わせでタイが使われたという。それ故なのか、タイを昆布締めにして、さらにハレの日を飾るものとして販売されている。

他には「アジ」や「エビ」も。歴史は古くないようだが、柿の葉寿司を和歌山県や奈良県を中心とした関西圏に閉じたものではなく、その魅力を全国に発信しようと、広く好まれる食材として採用されたという。

これらは、柿の葉寿司の詰め合わせに入る代表的なものであるが、お店によって種類や味付けが異なり、同じ魚が使われていてもその味わいはバラエティーに富んでいる。ぜひ、お気に入りの逸品を見つけてほしい。(次田尚弘/和歌山市)