世界的音楽遺産を未来に 南葵100年イベント

紀州徳川家16代当主・徳川頼貞が南葵音楽図書館を開設して100年の節目を記念するイベント「南葵100年!の集い~今にいきる世界的音楽遺産」が3日、和歌山市西高松の県立図書館メディア・アート・ホールで開かれ、同文庫の未来を考える講演やパネルディスカッション、記念演奏などが行われた。
南葵音楽文庫普及会(宮下直子会長)が主催した。
頼貞が収集した西洋音楽資料のコレクションは、父・頼倫が設立した私立図書館「南葵文庫」に加えられ、後に南葵音楽図書館となった。現在は「南葵音楽文庫」として読売日本交響楽団が所有し、2016年に県に寄託されている。
イベントの第1部では、南葵音楽文庫研究員、慶応義塾大学名誉教授の美山良夫さんが講演。同文庫には、ベートーベンの交響曲第9番「合唱付き」の日本人による初演時に使われた楽譜など、世界に一つしかない貴重な資料が多数含まれ、楽譜に書き込まれたメモなどから、当時の日本人の演奏水準や楽器の保有状況などが分かることを話した。
美山さんは「和歌山が(貴重な資料を)所蔵し、公開しているということを、何度でも伝えていかないといけない」と強調。頼倫が書に残した「國光」の言葉を引き、頼倫と頼貞が行った事業は、国の光を掘り起こし、人材を育み、国外の光を日本に紹介し、交流や文化外交の活性化を身をもって示すことだったと紹介し、「南葵音楽文庫も和歌山の光であり、国の光。200年に向けて、より輝くものにしていく不断の努力をし、もっと多くの人が享受できるようにしなければ」と語った。
第2部は、美山さん、元和歌山市立博物館主任学芸員の太田宏一さん、元県立文書館館長の山東良朗さん、海南nobinos副館長の馬場望さん、南葵音楽文庫普及会事務局長の岩橋和廣さんがパネルディスカッションを行った。
南葵音楽文庫の価値を発信する研究や学術講座などに加えて、音にして広めていくコンサートが重要との話題では、同普及会が7月から始めた「まちなかコンサート」への期待や参加の呼びかけの声もあった。
さらに、グッズ展開などすそ野を広げるための新たな取り組みや、同文庫の研究だけでなく、地元の人々による和歌山の音楽研究をもう一つの柱とするなどの提案も出た。
第3部の記念演奏では、落馬事故により16歳で死去した頼貞の弟・治にささげられた歌「涙の幣(ぬさ)」(本居長世作曲)を、混声合唱団「カペラ・エレクトラ」が歌ったのに続き、南葵文庫の公開披露式のために委嘱された「祝南葵文庫開庫歌」のオリジナル版と、県出身の作曲家・冷水乃栄流さんによるアレンジ版を、宮下会長がピアノで披露。来場者は聴き入り、大きな拍手を送っていた。
まちなかコンサートなど同普及会の活動情報は公式LINEで配信している。


