「玉ねぎ」の構造と魅力的な伝統農法

前号より、紀の川市を上回る農業産出額に起因する、淡路島の玉ねぎ栽培を取り上げている。稲作との二毛作や畜産との循環システムにより農地を余すことなく活用する仕組みに加え、玉ねぎそのものが甘く、市場価値が高いという魅力もある。そこには、地域ならではの伝統的な農法がある。今週は玉ねぎの構造を理解し甘さの秘訣(ひけつ)をひも解きたい。
玉ねぎの多くは、茶色の皮に包まれた球体の姿で販売。頭頂部はこの皮が一つにまとめられ、底には何本もの根が生えている。栽培中の玉ねぎは頭頂部から緑色の葉が生えているが、収穫時にカットされ乾燥の工程へと進む。それ故に、頭頂部が尖った形になっている。
私たちが食べる球体の部分を球根のように「根」と思われることが多いが、実は「葉」。「葉鞘(ようしょう)」と呼ばれ、成長すると次第に厚みが増し、重なり合うことで球体になっていく。
玉ねぎ栽培は、9月下旬ごろに種をまき、11月下旬から12月下旬にかけて稲作後の田に植え付け、翌5月上旬から6月中旬にかけて収穫。淡路島では収穫後「玉ねぎ小屋(つり小屋)」に10個程の玉ねぎを束ねてつるし、自然乾燥させる。風が強い地域性を生かし、自然の風でゆっくりと乾燥させることで熟成が進み、甘みが増していく。
和歌山県民の私たちにとって、紀北地域や大阪の泉州地域で目にする玉ねぎ小屋であるが、全国どこでも存在するものではない。瀬戸内海気候特有の発達した海陸風を生かした、地域特有の伝統的な農法。
近年は、つるし作業の負担を軽減するため、玉ねぎ小屋の使用が減っているという。地域に溶け込んだ風景を農業振興とともに守っていきたい。(次田尚弘/洲本市)

