「引き返す勇気」与えて 更生保護理解へ上映、トーク

「国際更生保護ボランティアの日」の17日夜、和歌山市BBS会(高垣晴夫会長)は、映画『灰』の上映とトーク会を和歌山市岡山丁の旧大村家住宅長屋門で開いた。会場には約15人が集まり、上映後に西尾塁監督(43)を交えて意見交換。参加者は作品を通して、犯罪や非行からの立ち直りを支える更生保護活動の意義などを語り合い、「学校などで子どもたちにも見せたい」といった声が相次いだ。

『灰』は、吉橋通夫氏の児童文学『なまくら』を原作に西尾監督が初めて監督した短編映画(35分)で、岩槻映画祭2024の審査員特別賞・観客賞などを受賞している。
舞台は1870年(明治3)の京都。貧困にあえぎながら灰を売って家族を支える「灰買い」として働く幼なじみの少年2人が盗みを犯してしまう。手を差し伸べようとする大人との出会いにより罪と向き合い、やり直しの機会を得る2人。殺伐とした現実の厳しさの中で、「道を間違えた子供に、引き返す勇気を与えてくだされ」との言葉が印象的に響く。
今回の上映会は、和歌山市出身で映画製作・配給の仕事に携わる西川和樹さんから『灰』の存在を聞いた高垣会長が、子どもの更生と周囲の大人の役割をテーマとする同作を通して、更生保護について考えてもらう機会をつくろうと企画。西尾監督、西川さんの協力で実現した。
作品を鑑賞した参加者は、和室の会場で西尾監督と共に車座となり、感想などを語り合った。
西尾監督は京都市出身で、太秦で5歳から子役として活動し、200作以上に出演してきた俳優。映画の原作は7編の連作短編であり、その中から『灰』の物語を選んだ理由については、「不良性がある少年を描きたかった。誘う側と誘われる側それぞれの内面を描けるのではないかと思った」と話した。自身の少年時代は、いたずらに誘う側だったとして、「自分の体験に近いニュアンスでイメージしやすいこともあった」とも語り、盗みが発覚し、2人が必死に逃げるシーンなど、暗く、ハードボイルドな描写にこだわったことなどを紹介した。
更生保護の観点から上映のオファーがあったことについては、「そういうことにフィットするとは思っていなかった。走り抜けて作っただけなので、自分が分からなかった方面の方々から評価を頂き、趣深く、やって良かったという思いがある」と話した。
参加者からは「道を間違えた時に引き返すには勇気がいる。子どもがその勇気を持てるよう力づける存在でありたい」、「悪いことをした子どもにあのように諭せる大人が、今の社会にいるだろうかと考えさせられた」、「いつの時代も子どもが道を踏み外す背景には生きづらさがある」などの声があり、「大人だけでなく子どもたちにぜひ見せたい」という意見が複数出た。
高垣会長は「国際更生保護ボランティアの日にふさわしい映画だと思う。赦(ゆる)すということは人を赦す場合もあるが、自分を赦すことでもある。自分がしてしまったことを認め、もう一度勇気を持ってやり直すためには、自分自身を赦せなければ次に進めない」と話し、同作のメッセージが更生保護の取り組みと重なることを強調した。
この日、会場の長屋門や和歌山城の岡口門は、更生保護のシンボルカラーである黄色にライトアップが行われた。



