おいしさと努力の証し「鳴門骨」

前号より、産卵期を迎え紀伊水道を北上する、旬の「桜鯛」を取り上げている。潮流が速い環境であることから身がよく引き締まり、歯応えが良いという食の魅力に加え、鯛の体にはこの地域ならではの特徴がある。今週は鯛の背骨にできる「コブ」について紹介したい。
地元産の鯛の身をほぐしているとき、背骨の一部が丸く膨らんでいることに気付かれたことがある方もいらっしゃるだろう。実はこれ「鳴門骨(なるとぼね)」と呼ばれる現象。激しい潮流の中を泳ぎ回ることで、骨が疲労骨折と治癒を繰り返し、次第に骨が肥大化するとされ、身が引き締まった鯛の証しとして知られている。
主に背骨の16~18椎体の辺りに1~3個程度のこぶが形成される。これは、おおよそ尻ビレの辺りに位置する。徳島県の鳴門では「力こぶ」と呼ばれ、縁起が良いとされる。鳴門に限らず、和歌山市加太で取れる鯛にも同様のこぶがあることが多く、料理店の板前から「この地域で取れる鯛ならではの特徴でおいしい鯛である証し」と聞く。
私たちにとっては見慣れたものであるかもしれないが、離れた地域では鯛のこぶに違和感を覚える消費者も。スーパーの店主によると「買った鯛の骨が膨らんでいるので返品したいと形状不良を訴えられ、検査センターに回すことがある。いずれも明石や鳴門などで取れた物の地域特性で、安全性に問題はないと説明しています」。
厳しい環境で育つ鯛が疲労骨折を繰り返しているとは想像がつきづらい。鯛にとっては努力の証しともいえるこぶ。おいしさの証しでもあるが、広く知ってもらいたいこの地域ならではの気候や風土の魅力である。(次田尚弘/和歌山市)

