保護グマ太郎が天国へ 生石高原で愛され大往生

和歌山県紀美野町と有田川町にまたがる生石高原で、長年にわたり保護飼育されてきた雄のツキノワグマ「太郎」が、先月29日に36歳で永眠した。クマの寿命は20年前後とされ、人間でいうと100歳を超える高齢。太郎の世話をしていた山田順二さん(60)は「最後まで生きようと懸命だった。天国で広い場所で好きなように遊んでほしい」としのんだ。
太郎は、さまざまな事情により野生で生き続けることが困難となり、人の管理下で暮らす「保護グマ」。1990年清水町生まれ。生後2カ月の時、母グマが猟師に撃たれ、鳥獣保護員として傷病鳥獣の保護活動に取り組んでいた故・東山省三さん(県鳥獣保護連絡会会長)に引き取られた。
500㌘だった体はどんどん大きくなり、行き場に困っていたところ、生石山で養鶏場を営む山田さんが引き取ることとなった。太郎のふるさとが見えるようにと、現在の場所に県が2頭分の獣舎を建設。92年から太郎は同じ歳の雄の保護グマ「健太」と暮らし始めた。
太郎はニンジンやサバ飯、アンパンなどが好物で、スイカやメロンは嫌いだったそう。山田さんは「スイカ1玉をあげた時、皮だけ食べて赤い実だけ残していたな」と懐かしそうに話す。一緒にタイヤで遊んだりもした。山田さんは、クマが喜怒を表現する生き物であることに驚いたといい「満腹になったらご機嫌になる。ご飯あげるのを忘れた時は、かまれたな」と笑顔。

しかし、健太が97年に息を引き取ってから太郎は人間を警戒するようになり、近づくと逃げるようになった。それ以降、山田さんと檻の中で一緒に遊ぶことは無くなった。その後も山田さんをはじめ、ボランティアらの協力で太郎は元気に暮らしていたが、歳を重ね一昨年くらいから後ろ足を引きずるようになった。後ろ足、右手、左手と筋力が弱っていき、ことし2月には立てなくなり寝たきりになってしまった。徐々に食べ物を口にしなくなり「覚悟はしていた」と山田さんは話す。
食べなくなった太郎に、山田さんの知人がシジミを送ってくれ、旅立つ前日、シジミ汁にして太郎に飲ませたところ「大きな口を開けて喜んで飲んだんで希望を持った」と振り返る。しかし翌日、山田さんが昼に食べ物を持っていった時には、息を引き取っていたという。
120㌔あった体重も50㌔に。知らせを聞いた人たちが駆け付け、きれいに太郎の体を拭いた。たくさんの花とともに埋葬し、別れを惜しんだ。
雌の花子への恋心は片思いで終わってしまったことや、365日ご飯をあげないといけないのが大変だったことなど、太郎との思い出があふれると話す山田さん。「勝ち気で芯のある男の子だった。たくさんの人が大事にしてくれ、太郎を通じてさまざまな経験をさせてもらった」と感謝。「クマは道具を使い、表現が豊かで人間に近い動物。一頭でも保護して助けてあげられたら」と話している。
現在、同所では保護グマの「くまこ」が暮らしている。


