有機肥料「魚粕」の特徴と効果

たくさんの実をつける県内のミカン畑
たくさんの実をつける県内のミカン畑

前号では、現代のミカン栽培に息づく、江戸時代に栄えた「干鰯(ほしか)」の歴史を取り上げた。今は干鰯ではなく「魚粕(ぎょかす)」と呼ばれる有機肥料が用いられているが、その特徴と作物への効果はいかほどのものか。今週は海が育む山の幸について紹介したい。

作物を育てる際に肥料の三大要素とされる「窒素」「リン酸」「カリウム」。魚粕には窒素とリン酸が比較的多く含まれる。窒素は茎や葉を育てるのに有効とされ、魚のタンパク質に由来し、およそ7~10%、花や実つきを良くするとされるリン酸は、魚の骨に由来しおよそ4~8%含まれる。

一方で根の発達や暑さ寒さへの耐性を作るカリウムの含有量が少ないことから、別の有機肥料で補う必要がある。また、魚特有の匂いが動物などを引き寄せることにより害を被る恐れがあるため、土の中に混ぜ込む必要があるなど、ひと手間かかる。

効果としては豊富なアミノ酸が土壌の微生物に分解され、作物がそれを吸収することで、野菜や果物では甘みやうまみを引き出してくれる。ミカン栽培においては、甘みやコクを出すために有効な肥料として活用されている。中には米ぬかや、カニの殻、海藻などと混ぜ合わせた、生産者秘伝の配合も。畑の地形やミカンの品種などさまざまな栽培条件にあわせた工夫がなされ、全国に誇るこだわりのミカンが作られている。

昭和初期の化学肥料の普及により衰退した、魚をもとにした肥料の文化。ミネラルなどの山の恵みが川を経て海の生物を育てるケースはよく耳にするが、これは逆。和歌山ならではの、持続可能な海と山の恵みの循環モデルがここにある。(次田尚弘/和歌山市)