「共謀罪法」運用監視を 髙山京大教授講演

 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法について考える和歌山弁護士会主催の市民集会「あらためて、いわゆる共謀罪(テロ等準備罪)法がもたらす社会を考える」が和歌山市手平の和歌山ビッグ愛で開かれ、京都大学大学院法学研究科の髙山佳奈子教授が刑法学の観点から同法の問題点について講演し、約100人が聴き入った。

 同会の畑純一会長はあいさつで「共謀罪法をもたらした社会の実相を知り、悪用されないように監視しなければいけない」と訴えた。

 髙山教授は、衆議院法務委員会の参考人質疑で意見を陳述するなど、共謀罪に関する研究の第一人者。一定の犯罪を行うことを共謀することで成立する共謀罪は、実質的な危険を処罰する日本の刑法と考え方が合わないことを指摘した。

 同法の成立を巡っては、与党が参議院法務委員会での審議を打ち切り、本会議で採決する「中間報告」を実施。髙山教授は、委員会付託中の案件を議院で審議できるのは緊急時や特に必要がある場合のみとする国会法の規定を紹介し、「今回は緊急時ではなく、要件を全く満たしていない。採決は無効」と述べた。

 同法の成立で、薬物の不正取引や金融犯罪などへの対処を定めた「国連国際組織犯罪防止条約」の締結が可能となり、東京五輪に向けたテロ対策が進むとする政府・与党の主張については、「同条約を結ぶために共謀罪を立法化したのは世界でノルウェーとブルガリアのみ」と話し、国連が各国向けに作成した「立法ガイド」でも共謀罪の立法化は義務付けられていないと指摘。「(国内法の整備で)条約の精神を100%実現してから締結する必要はない」と説明し、日本が国連海洋法条約を批准後、10年以上たってから海賊処罰法が制定された事例を紹介した。

 改正組織犯罪処罰法の問題点として、集団の一人が犯罪を実行すると全員が正犯となる「共謀共同正犯」や、組織的犯罪処罰法に関する最高裁判所の判例を取り上げ、「適用の対象となる組織的犯罪集団や計画の合意が無限定」と指摘。予想される同法の運用形態について「最初は世論の批判が出にくい薬物犯罪や特殊詐欺、暴力団などの組織が対象となるのでは」と予想した。さらに、捜査権限が濫用される可能性に懸念を示し、「自由を害された人が独立の審査機関に申し立てできない状況は問題。市民が正しい情報を少しずつ拡散していくことが大切」と呼び掛けた。

「共謀罪」について講演する髙山教授

「共謀罪」について講演する髙山教授