森友・日報問題の論点 公文書巡るシンポ
行政による公文書の管理について考える和歌山弁護士会主催のシンポジウム「公文書は誰のもの?~あらためて国民の知る権利を考える~」が23日、和歌山市小松原通の県民文化会館小ホールで開かれ、弁護士で獨協大学特任教授の三宅弘さんが講演し、市民約50人が聴き入った。
森友学園(大阪市)に対する国有地払い下げ問題や防衛省による南スーダンPKOの日報廃棄問題などが国民的関心事となる中、法律が公文書の管理についてどう定めているかを知ってもらおうと企画した。
三宅さんは、内閣府の公文書管理委員会で委員長代理を務めるなど、公文書管理や情報公開制度の分野で第一人者とされている。
財務省近畿財務局が大阪府豊中市の国有地を森友学園に格安で売却した問題について、三宅さんは同局が売却を巡る交渉記録を示す文書を廃棄したとしている点を「公文書管理法違反で、故意にやった場合は刑法の公用文書等毀棄罪にあたる」と強く批判。同法が第4条で行政機関に対し、行政上の意思決定に至る過程を表す文書の作成を義務付けており、第8条で保存期間が満了した文書の廃棄には内閣総理大臣の同意が必要としている点を紹介した。
同省は規則で文書の保存期間を1年から30年までとさまざまに設定しており、土地売却交渉の文書は規則のどの規定年数にも当てはまらないとして、保存期間は1年未満としたと主張している。三宅さんは同省の規則と同じ文言が含まれる行政文書ガイドラインを挙げ「文書管理者は事業の性質や内容に応じて保存期間の基準を定めなければならない。8億円もの値下げは会計検査院によるチェックの対象で、ガイドラインの通り最低5年は保存が必要だ」と話した。
防衛省が南スーダンPKOに参加中の陸上自衛隊から届いた日報を廃棄していた問題については「安保関連法で駆け付け警護が認められてから初のPKO。歴史的な事実が書かれた文書を捨てたと聞き愕然とした」と振り返り、省庁ごとに文書管理のあり様が異なることを紹介。防衛省は情報公開請求に対して「文書不存在」と回答することが多いと話し「紙で公表すると電子データを消す傾向が強い。これで日本はしっかりした外交ができるのか」と話し、疑問を示した。
三宅さんは日本社会について「行政文書に対する理解が定着していない」と指摘。国民による権力の監視が機能する社会づくりに向け「人は知らないと表現ができない。廃校を活用した公文書館の整備を進めてはどうか」などと話した。