円滑な事業承継を支援 県ネットワーク発足
経営者の高齢化や後継者不足から中小企業が廃業を余儀なくされるケースが増える中、和歌山県内中小企業の円滑な事業承継を支援しようと、2日、「県事業承継ネットワーク」が発足した。国や県、商工団体や金融機関など、中小企業支援にあたる約20機関で構成。経営者らに対し身近な専門家が聞き取り調査などを実施し、事業承継の解決策を提案する。
同ネットワークは中小企業庁の委託事業として、2017年度から各都道府県に順次設置されている。事務局は和歌山商工会議所内に置き、専門のコーディネーターを配置。すでに設置されている、第三者承継を中心にした事業承継支援専門機関「県事業引継ぎ支援センター」と連携しながら、事業承継に関する全般的な相談に応じ支援策を講じる。
この日、和歌山市西汀丁の同会議所内で開かれたキックオフ会議には構成機関の約40人が参加。県商工会議所連合会の野田寬芳常任幹事が「和歌山でも廃業が相次ぎ、地域の経済、産業にとって事業承継は最も重要な課題。ぜひとも全国に先駆けて数字を上げていきたい」とあいさつ。今後の取り組みの概要や全国の状況を報告し、意見交換した。
2016年度の総務省の調査によると、中小企業は経営者の高齢化が進む一方、70歳以上の経営者の約半数が後継者の引き継ぎ準備を行っておらず、今後雇用や生産性が大きく失われる可能性が懸念されている。特に地方での事業承継は深刻で、後継者不足による倒産や廃業が進んでいる。
県内の企業数は2009年に4万4007件だったが、5年後の14年には7608件減少し3万6399件に。5年以内に事業承継も廃業もなく、検討もしていないと回答した経営者の割合は54・6%で、事業承継への関心が薄い現状にあるという。
このため、事業者に身近な金融機関や士業団体などの支援機関が働き掛け、事業承継への重要性の気付きの機会を提供したり、必要に応じ専門家を派遣したりするプッシュ型支援で、承継完了まで切れ目のないサポートの仕組みをつくる。
まずは7月から9月にかけて、県内2000件以上を目標に、50歳以上の経営者に直接面談で事業承継診断のアンケートを実施。県内の事業承継の分析、支援対象企業の掘り起こしを目指す。