未来のために過去を知る 東大・川添氏講演

 第118回和歌山放送情報懇談会が17日、和歌山県和歌山市湊通丁北のホテルアバローム紀の国で開かれ、同市加太地区に研究分室を構える東京大学の川添善行准教授が「空間の可能性~地域再生の町づくりを目指して~」をテーマに講演し、約130人が聴いた。

 川添准教授は、ハウステンボス(長崎県)にある「変なホテル」の設計でギネス記録に登録され、約100年ぶりに東京大学総合図書館別館を完成させた新進気鋭の建築家。ことし3月には和歌山市と東大生産技術研究所が連携協定を結び、川添研究室が「加太分室・地域ラボ」を開設し、地域住民と一体となって地域再生の研究に取り組んでいる。

 講演で川添准教授は「未来をつくるには過去を知ることから始まる」ことを強調。沖縄県の竹富島の例では、民家の屋根が同じ角度で造られているなど独特の構造を持つ島の伝統的な建物を研究し、台風に備えて風の影響を軽減しつつ、日常は家の中に風が通るよう工夫されていると分かったことを話した。

 東京大学総合図書館別館の設計については、以前あった噴水の意味や歴史を探った上で一度解体し、地下の別館に明かりを取り入れる天窓の機能も持たせてよみがえらせたことを紹介。「汚れや風合いは歴史の面白さ。新しいものをつくることだけが建築家の仕事ではない」などと語り、質疑応答も行われた。

 和歌山放送の中村栄三社長は「人口減少が大きな社会問題となり、少子高齢化、地方の衰退・過疎化が進む中、和歌山でも地域再生が大きな政策課題となっている。川添先生の講演は、県内各地で地域再生や観光問題に取り組む皆さまの参考になると思う」と話した。

会場からの質問に答える川添准教授

会場からの質問に答える川添准教授