能楽師の松井さん 地域功労で文科相表彰
芸術文化の向上や文化財保全などで地域文化の振興に功績のあった個人や団体を文部科学相が表彰する本年度の地域文化功労者表彰に、和歌山県内からは和歌山市東高松の喜多流能楽師・松井彬さん(72)が選ばれた。松井さんは「一層『頑張らないと』という思い。表彰を励みに、生まれ育った和歌山に恩返しができるよう、まい進したい」と喜びを語っている。
松井さんは6歳から和島富太郎氏に能を学び、1959年に喜多流宗家・喜多実氏の内弟子に。67年に独立して同市に喜松会を発足。「けんぶん能」や「市民能」「日前宮薪能」「和歌の浦万葉薪能」など、県内の主な能公演に第1回から出演し、地元の文化振興に寄与してきた。県文化功労賞、同市文化賞など受賞。
東京や大阪などでも定期的に公演する他、72年に和歌山市の姉妹都市、カナダ・リッチモンド市と米国ベイカースフィールド市へ親善使節の一員として訪れたのをきっかけに、海外でも精力的に活動。異文化とのコラボレーションや新作能の演出にも力を入れ、中でもカナダに渡った移民の悲哀と望郷を表現した英語能「かもめ」は大きな反響を呼び、2008年に日本の演劇に関連した海外の上演作品に贈られる「内村直也賞」を受けた。
米国の州立大学で能楽の指導に当たり、イギリスのロンドン大学ロイヤルホロウェイ校から名誉博士号が授与されるなど、海外でも高い評価を受ける。
松井さんは「(21年に)県で開かれる国民文化祭を控える中で、和歌山にも素晴らしい文化があることを発信できるよう、盛り上げていきたい」と思いを新たにしている。