音楽に捧げた頼貞の半生 未来塾で美山さん
各分野のオピニオンリーダーから豊かに生きる力を学ぶ和歌山県教育委員会の2018年度第3回「高校生のための和歌山未来塾」が15日、和歌山市西高松の県立図書館メディア・アート・ホールで開かれた。慶応義塾大学名誉教授の美山良夫さんが「西洋音楽を日本に~徳川頼貞 音楽のために捧げた半生~」の演題で、紀州徳川家16代当主・頼貞(1892~1954)が集めた西洋音楽資料「南葵音楽文庫」について講演し、県内10校から200人が参加した。
美山さんは同大デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構で南葵音楽文庫貴重資料デジタル化のプロジェクトリーダーを務め、資料整理や研究を進めている。講演は高校生によるピアノとバイオリンの演奏を交えて行われた。
頼貞は幼少期から西洋音楽に関心があり、家の前を通る軍楽隊のパレードを楽しみにしていた。美山さんは頼貞の使っていた楽譜を紹介し、シューベルトの軍隊行進曲など頼貞がピアノを練習した譜面をスクリーンで紹介した。
その後頼貞は英国ケンブリッジ大学に留学したが、第1次世界大戦の激化により帰国すると、東京都内に日本で最初の音楽ホール「南葵音楽堂」と音楽図書館を設立し、音楽資料の収集や演奏会と音楽家の支援などに努めた。ベートーベン「第九」の日本人による初演に向けても活躍し、バイオリン用の楽譜が少なくて手書きの写譜を用意したことや、合唱用の楽譜を400冊用意したことなど頼貞の精力的な取り組みを説明した。
美山さんは、県に寄託されている南葵音楽文庫は文献的価値が高いとして、「南葵文庫は過去や世界に広がるコレクション。和歌山や徳川家について学び、南葵文庫を誇れるものにしてもらいたい」と語り掛けた。