川上酒の再興目指し 初桜酒造がプロジェクト

和歌山県の紀の川上流で造られてきた「紀州川上酒(かわかみしゅ)」を造るかつらぎ町唯一の酒蔵、初桜酒造㈱は、醸造元の廃業で幻となった酒「酔人日(スイトピー)」を復刻。川上酒の再興を目指し、インターネット上で資金を募るクラウドファンディングを行っている。9日まで。

紀州川上酒は現在の橋本市から紀の川市粉河あたりの地域で造られ、1800年ほどにさかのぼるともいわれ、江戸時代には「川上酒」として和歌山城下や大阪、江戸に出荷されていた。酒の消費量が減ったことから川上酒の文化は次第に失われ、現在は同社のみとなっている。

「酔人日」は帯庄酒造合資会社が1926年ごろに醸造したと推定され、川上酒の顔ともいわれた銘柄。当時の日本酒としては珍しくワインボトルのような瓶の形に英語表記と海外輸出を視野に入れたようなデザインだった。同社は2009年ごろに廃業し、現在は販売されていない。

初桜酒造では、当時の資料をもとに構想を考え、秋口まで寝かせ、味と香りが熟成されてまろやかになった「秋上がり」の大吟醸を醸造した。

プロジェクト支援はクラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」から。支援額に応じて「酔人日」とシリアルナンバー入りの専用木箱がもらえる。

初桜酒造4代目蔵元の笠勝敦夫さんは「川上酒という文化が消えそうになっている。酔人日の復刻が面白い産業文化を見て、知ってもらう機会になれば」と話している。

幻の酒を復刻した「酔人日」(初桜酒造提供)

幻の酒を復刻した「酔人日」(初桜酒造提供)