海南市下津町の里謡を後世に
海南市下津町の里謡を後世に残そうと、 同町小南の故・庄礼(しょうれい)通和さん(享年68)が書いた歌の原稿が自宅から見つかった。 庄礼さんは昭和61年に地域に伝わる歌を聞いて回り、 テープに録音し、 楽譜として残した。 高齢化が進み、 現在では里謡を知る人が少なくなってきているため、 庄礼さんの活動は大変意義深く、 原稿は文化的価値があるという。 今後、 まとめて本にしようとする動きもある。
下津歴史民俗資料館 (同町上) の中谷澄雄館長が庄礼さん宅の新福寺を訪れた際、 床礼さんの家族から原稿の存在を教えてもらった。 原稿を見た中谷館長は 「これはすごい。 大変価値がある」 と驚いたという。
庄礼さんは生前、 同町文化協会に所属し、 高校教諭をしながらブラスバンド部で指導していたといい、 音楽がとても好きだったという。 庄礼さんは 「地域に伝わる音楽を眠らせておくのはもったいない」 と地域のお年寄りから聞き取る活動をしていた。
庄礼さんは原稿の冒頭で里謡への思いをつづっている。 「里謡は遠い遠い私たちの先祖がうれしいにつけ、 悲しいにつけ、 互いに励まし助け、 歓び合い慰め合ってきた庶民の生活の物語。 親から子に、 子から孫へと口伝えで伝えられてきた故郷の詩で、 かけがえのない無形文化財」 と記している。
原稿には仲間と一緒に収集した約35曲の中から10曲を載せた。 全ての楽譜に曲名、 所要時間、 歌う人や演奏する人、 歌われる機会、 目的、 場所、 人数、 由来をまとめた。 同じ種類の歌でも地域が違うと歌詞や節が異なり、 味わいがあるという。
同館は31日に閉館するため、 中谷館長は同館最後の活動として、 庄礼さんの原稿を本にする予定だ。 中谷館長は 「これだけ思いがこもった活動の成果を、 本にして何とか日の目を見させてやりたい。 里謡は今はもう歌える人も少なくなってきた。 すごく貴重な活動だ」 と話している。