日本板画院名誉会員に 元支部長の坂田さん

 版画家集団 「日本板画院」 和歌山支部の元支部長、 坂田泰一さん(87)=和歌山市葵町=は、 板画院発展などに努めたとして関西で初めて名誉会員に推戴されたことを記念し、 今月上旬、 これまで制作した版画7点(総額約840万円相当)を市に寄贈する。 名誉会員への推戴は日本板画院の70年の歴史の中でも10人に満たないという。

 坂田さんは昭和50年の同支部設立時に支部長に就任。 平成6年度市文化功労賞を受賞、 20年には春の叙勲で瑞宝双光章を受章した。 欧州やアジアなど海外でも多数の賞を受けている。

 版画との出合いは、 児童らが出展する教育版画の展覧会で鳥取県の名誉会員、 長谷川富三郎さんに誘われたこと。 以後、 寝る間も惜しみ、 版画に情熱をささげてきた。

 寄贈する作品は、 「那智の火祭」 (F50号) 「大自然に彫る」 (M50号)などの大作の他、 「新緑の和歌山城」 (P10号) 「一の橋大手門」 (同)など小品を含む7点。

 坂田さんは現在、 心臓病などを患い市内の病院に入院中。 妻の沢子さん(80)と娘の北島益美さん(60)が代わりに届ける予定だ。

 名誉会員は、 会員の進む方向や作品追求の姿勢などに誤りがないか見定める役割がある。 坂田さんはこれまでの版画人生を振り返り、「(版画を)やってなかったら何もないわ。 彫るのに時間はかかるが一度仕上げたら何枚も刷れるし、 大勢の人に喜んでもらえる」 と語っている。