出資者らぼうぜん 「野半の里」破産手続き開始
8月26日に破産申請の準備に入った㈱野半の里(かつらぎ町、中神住春社長)代理人、堂島法律事務所の青海利之弁護士によると、31日に同社の破産手続き開始決定が下され、破産管財人が決まった。来週中に債権者に通知書が発送される。今後、債権者への説明会を検討中という。㈱東京商工リサーチによると負債総額は当初の推定より5億円増え、推定14億円。債権者数は700人に上る。
無料入浴券で出資募る 野半の里は温泉の掘削工事の資金として、1口100万円程度の預託金を募り、利息の代わりに温泉の無料入浴券を渡していた。債権者のうち500人は一般客で、「被害者の会」を立ち上げる話も浮上しているという。30日、野半の里には温泉目当ての客が大阪や奈良ナンバーの車で次々と訪れ、入り口に貼られた破産申請準備の貼り紙を読み、驚いていた。その多くがリピーターだった。
敷地内で掘削中の第6源泉の工事は、ストップしたまま。東大阪市の夫婦は、1口50万円で平成21年から3年据え置きで出資し、100回分(約8万円分)の無料入浴券を受け取っていた。7月に貸し付けの継続を行い、12日には家族で温泉と食事を楽しんだ。夫婦は「継続したばかりなのに。きのう知って驚いた」「何口もしていた人もいるはず」とぼうぜんとしていた。
個人で1800万円出資も 温泉の利用客、橋本市の大学講師の男性(50)は1800万円を出資していた。平成15年ごろから募集していた1口100万円の預託金。当初は3年据え置きで利息は5%だったが、同社は温泉の掘削や施設開設などのたびに預託金を募り、利息は最高9%まで徐々に上がった。
利息分は無料入浴券として受け取り、満了時には元本が預金通帳に返金(継続を除く)され、入浴券の使い残し分が現金で返還される仕組みになっていた。男性は、ことし5月には18口1800万円(使い切れなかった入浴券分が現金で返還されたため、実質約1500万円)を預けていた。
男性は、29日に同社のホームページがつながらなかったことから、現場を訪れ破産を知った。「目の前が真っ暗になって、その場でへたりこんだ」と話し、「預託金以外で被害を受けている人もいる。うそと虚構に満ちた経営。二度と私たちのような被害が起こらないような世の中になってほしい」と憤りを見せた。
近所の住民によると、週末はバスツアーなど県外の客でにぎわっていたが、平日の客は少なかったという。破産したことを知り、「急なことで驚いた。食事はしたことがあるけど、あまり行かなかった」と話した。
工事がストップしている第6源泉掘削現場