「目に見えない感動、大事に」 伏虎金属工業

 和歌山市吹屋町に本社を置く伏虎金属工業㈱(前田寛二社長)は県内唯一のポンプメーカー。ポンプの開発から製造・販売までの一貫体制を確立している。平成13年に開発した液体を撹拌(かくはん)することなく移送できる「2軸スクリューポンプ」など、大手食品・化学メーカーなど各業界からの需要があり、今期は3割売上を伸ばした。前田社長(70)は「何事も感動から始まる。目に見えない感動が人間にとって大きな力に変わる」と笑顔を見せる。

 前田社長は、父親が経営していた鋳物を販売する「前田商店」を手伝っていた時、取引先から「鋳物の機械加工をしてみては」と声を掛けられた。「このままではいけない」と考えていた矢先のこと。新たに機械部を立ち上げ、昭和39年に会社を法人化。「㈲伏虎金属工業」と名付け、大手電機メーカーの部品加工業者として技術や知識を高め、他社にはない製品づくりに取り組んでいった。 

 同55年、「ドラム缶の底に残る原料を全部引き抜きたい」と相談を受け、自吸性の高い「ベーンポンプ」に着目。試行錯誤の末、円滑に液体を移送できる「ラジアルベーンポンプ」を完成させた。さらに、57歳の時にコンピューターを用いた設計システム「CAD」と出合い感動。独学で学び、手描きしていた図面をCADで設計するようになった。ひたすら設計に没頭し、約3年の歳月をかけて同社の主力製品の一つとなる2本のスクリューポンプを生み出した。

 2軸スクリューポンプは、回転部が非接触なのでポンプ部品の摩耗がない。2本のスクリューの回転によって真っすぐ押し出すので、超高粘度液やケーキ状物質でも性質や食感が変わることなく安定的に移送できる。また、部品のランニングコストを軽減できること、分解しやすく洗浄が簡単にできることも特徴だ。独創性が評価され、同ポンプは同22年度県発明考案等知事表彰を受賞している。

 前田社長は「今後は、スクリューポンプを主軸に、国内のみならず、海外展開を目指す。さらに、商品の完成度を上げ、うちにしかないものを商品として育てていきたい」と話している。