都心で和歌山を感じられる  特別名勝・六義園

 東京都文京区本駒込。ここに特別名勝に指定された「六義園(りくぎえん)」という庭園がある。しだれ桜や紅葉のライトアップが有名でニュース番組で紹介されることも多い有名な庭園。実は和歌山と深い関係がある。

 六義園は1695(元禄8年)徳川五代将軍・徳川綱吉の側用人・柳沢吉保が造営した大名庭園で、約2万7000坪の平地に丘を造成するなど7年の歳月をかけて築かれた。名称は和歌における六つの分類法である「誌の六義(和歌の六体)」に由来。

 園内は万葉集や古今和歌集に詠まれた「和歌の浦」をはじめとした紀州の景勝地や中国の故事にちなんだ景観が映し出され、和歌浦、紀ノ川、藤代峠、妹背山、吹上浜など、和歌山の地名が続く。一説には徳川綱吉が生涯で58回、徳川家宣や徳川吉宗も度々訪れたという。現在は都立庭園として整備され一般公開されている。

 筆者が訪れた6月上旬、和歌山市の花でもあるツツジが見頃を迎え、どこか故郷の和歌山を思い出させてくれた。交通網の発達で東京と和歌山は近くなったが、先人方の時代ではそうはいかない。遠く離れた土地で小さな和歌山を感じられるスポットとして、筆者が感じた以上の安らぎや喜びを感じていたに違いない。
    (次田尚弘/東京)