東京スカイツリーの原点に  注目浴びる「コウヤマキ」

 前号では京奈和自動車道の開通による高野山の観光振興への期待について紹介した。

 高野山に古くから伝わるコウヤマキ(高野槙)は読者の皆さんにもなじみのある植物だろう。近年、このコウヤマキが注目を浴びている。コウヤマキが秋篠宮家の悠仁(ひさひと)さまのお印に選ばれたことをご存知の方も多いと思うが、2012年5月に開業した東京スカイツリーのデザインの原点であることをご存知だろうか。今週は私たちにとって身近な植物であるコウヤマキについてクローズアップしたい。

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 コウヤマキは高野山周辺の真言宗を信仰する寺や家庭で仏前の切り枝として使われてきた。仏前の切り枝となった由来は、かつて高野山にあった「禁忌十則」という慣習的に禁止する規律や規則の中に「禁植有利竹木」という、果実がなる木や観賞用の花が咲く植物、竹や漆等を高野山に植えることを禁じたことにある。仏前に供える花の代わりが必要となり、年間を通して美しい光沢があり、よい香りがするコウヤマキが選ばれたという。

 福島県以西の本州と九州に分布。成長が遅い半面、繊維が緻密であることから抗菌性や耐水性があり、桶などの日用品から、風呂、船、橋に至るまで高級木材として使用されてきた。

 東京都墨田区の東京スカイツリーのデザインを監修した彫刻家・澄川喜一さんの故郷、島根県吉賀町にもコウヤマキの自生林があり、スカイツリーのイメージは故郷のコウヤマキの美しい立ち姿にあるといわれ、東京スカイツリーが構成される3本脚にちなみ、3本の島根県産コウヤマキが同敷地内のソラマチひろばに植樹されている。

 近年注目されるコウヤマキ。県外の多くの方々に、名前の由来と関係する高野山へ来てほしい。
   (次田尚弘/和歌山)