集団的自衛権は抑止力の強化 「戦争する国」はいわれなき批判

 6月下旬から7月上旬にかけての2週間ほどの間に、安倍政権はいくつかの重大な決定を行った。どれをとっても一内閣が何年もかけてようやく一つ実現できるかどうかといった、難度の高い政策決定であった。6月24日には骨太の方針と成長戦略改訂版をまとめ、来年からの法人税減税、聖域と言われた農業改革への着手、未承認抗がん剤等保険外診療併用を患者の申し出で可能にする改革、年収1000万円以上の専門職に関して労働時間規制を撤廃する等々、いままで不可能と言われてきた改革を実行に移すことを、具体的スケジュールも添えて約束した。
 さらに7月1日には集団的自衛権行使に関する与党合意がまとまり、歴史的な閣議決定が行われた。その臨時閣議において私が官房副長官として閣議決定文を約20分間にわたって読み上げた。歴史的な閣議で重要な役割を果たすことになり、感慨無量である。

 そして7月4日には、北朝鮮に対する制裁の一部解除を決定した。これは安倍内閣の対話と圧力の姿勢の前に、北朝鮮側が拉致被害者や特定失踪者に関して責任ある体制で調査するとの具体的提案を出してきたため、その調査が動き出すにあたって日本独自の制裁の一部解禁に踏み切った。

 このように安倍内閣は決められない政治と決別し、議論を尽くした上で決めるべき時には決めるという政治を進めている。副長官としてこれらの決定についてきちんと国民に理解されるよう努めていかなくてはならない。

 中でも集団的自衛権は、わが国を取り巻く国際環境が厳しい中で重要だ。しかし残念なことに一部のメディアでいわれのない非難が行われている。

 たとえば「戦争する国になる」とか「子供を戦場に送る」といった批判はまったく当たらない。われわれは国際紛争はあくまでも話し合い(外交)によってのみ解決していく決意である。しかしそのためには相手に日本に対して戦争を仕掛けようなどという気持ちを持たせないことも重要であり、そのためには抑止力が必要で、集団的自衛権の行使はその抑止力の強化につながる。より戦争に巻き込まれる可能性を低くする取り組みなのである。

 「徴兵制につながる」との批判も荒唐無稽である。日本国憲法は苦役の強制を禁じており、徴兵制はできない。自民党の憲法改正草案ではそのことは明記しており、将来にわたって徴兵制が導入されることは絶対にない。そもそも技術が高度化している現代の軍隊には高度な専門性が求められており、各国とも志願制を採用するようになっており、新たに徴兵制を導入する合理性すらない。

 また「議論が不十分」、「国民への説明がない」との指摘もあるが、本件は7年前の第一次安倍内閣の際に問題提起し、議論が始まった。その後メディア等でもさまざまな議論が行われた。今回有識者の報告書が出た際に安倍総理は記者会見してその報告書に対する政府の基本的考え方を説明した。またその後国会では延べ70人の議員の質問に総理や大臣が答えている。また閣議決定した際には総理が再び記者会見して、国民に直接説明を行っている。

 一部メディアによる報道でこのような誤解が広がっていることは残念だが、今後とも丁寧に説明をして、誤解を解いていきたいと思う。